チャーシューも煮卵もメンマさえない。あるのは彩りを添える青ネギだけ。今年4月、京都市右京区西院にオープンした「かけラーメン 一(はじめ)」の看板メニューは、税込み400円のこの「具なし」ラーメンだという。
運営するのは濃厚な「こってり」が代名詞のラーメンチェーン「天下一品」を展開する天一食品商事だ。
専門家によると、こうした「具なし」ラーメンを扱う店は広がっているという。
「一」では、チャーシューやメンマといった具材が入った「ラーメン」(600円)やチャーシューや白髪ネギ、煮卵などが入った「スペシャルラーメン」(1290円)なども用意してはいるが、かけラーメンが一番人気という。
夜は居酒屋となる「一」のラーメン店としての営業時間は、午前7時~午後2時。出勤前の「朝ラーメン」で腹ごしらえする客も多い。
天一食品商事営業部課長の伊藤慎吾さんは「朝食代わりに、さっぱり、スルスルと食べられるラーメンにしようと考えました」と話す。
かけラーメンは、サイドメニューのおにぎりと一緒に食べても500円前後。ほぼワンコインで空腹を満たせるような価格設定にしたという。
ラーメン業界は、高騰する人件費や電気代、原材料コストなどの高騰に直面している。
ラーメン評論家の山路力也さんによると、そんな厳しい経営環境で、具をなくして通常より価格を下げた商品を展開するラーメン店は首都圏を中心に浸透しつつあるという。
「麺とスープのみという従来のラーメンになかった目新しさも訴求力になるほか、麺とスープに自信があるからこそ『かけラーメン』を提供できるというブランディングにもつながります」
一方、消費者にとっては、低価格であることだけでなく、トッピングでカスタマイズもできるため、無駄なく食べたいものを食べられる利点もあり、受け入れられているとしている。 【松山文音】
Comments