現代の日本人に国を託せるのか 数奇な運命の駆逐艦が問う「雪風 YUKIKAZE」ほか シネマプレビュー 新作映画評

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公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。

「雪風 YUKIKAZE」

先の大戦において沈没戦艦の乗員らの命を多数救護した駆逐艦「雪風」の数奇な運命を描く戦争映画。主演は誠実な艦長を演じる竹野内豊。監督は「空母いぶき」や「聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実」などの山田敏久。

メッセージが明確だ。先の大戦を忘れなければ、日本人はきっと大丈夫だという劇中の語り。災害の救助に尽力し雪風の使命を現代に引き継ぐある女性。「日本を頼んだぞ」という観客への語りかけ。これらは同時に、現代の日本人に本当に国を託せるのかという問いかけでもあろう。短い出番だが、中井貴一が重厚な存在感を放つ。

15日から全国公開。2時間。(健)

「アイム・スティル・ヒア」

軍事政権下のブラジルで起こった元国会議員の暗殺事件について、家族が記した回想録をウォルター・サレス監督が映画化。米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した。

1971年。元議員のルーベンス・パイヴァ(セルトン・メロ)が軍に連行され、そのまま消息不明に。5人の子供たちとともに残された妻、エウニセ(フェルナンダ・トーレス)は、必死に夫の行方を捜すが…。

妻の視点で物語は進む。直接的な暴力は登場せず、気配や壁越しの悲鳴などで軍政の恐怖をありありと描く手腕が見事。残された家族が抱える痛いほどの喪失感が胸をえぐる。12歳以下の鑑賞には保護者らの助言・指導が必要。ブラジル・仏合作。

全国順次公開中。2時間17分。(耕)

「ChaO」

仏アヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門で、日本作品としては「この世界の片隅に」(片渕須直監督)以来の審査員賞に選ばれた長編アニメ映画。制作はSTUDIO4℃。

人間と人魚が共存する未来で、人間のサラリーマン、ステファン(声・鈴鹿央士)と、人魚王国の姫君、チャオ(声・山田杏奈)の恋をユーモアを交えて描く。

細密な背景画と個性的な人物デザインの組み合わせによる独特のビジュアル。ザ・ビートルズの「イエロー・サブマリン」を思い出した。好みは分かれるか。伏線を張ってくれた方が、恋の行方にもっと胸を打たれるかも。

15日から全国公開。1時間29分。(健)

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