女優の今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月〜土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は15日、第100回が放送され、柳井嵩(北村匠海)が歌詞を手掛ける童謡「手のひらを太陽に」の一節が生まれる“瞬間”が描かれた。制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサー(CP)に作劇の舞台裏を聞いた。
<※以下、ネタバレ有>
「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」シリーズなどのヒット作を放ち続ける中園ミホ氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算112作目。国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦を描く。
第100回は、ミュージカル「見上げてごらん夜の星を」は成功裏に幕を閉じる。しかし数日後、柳井嵩(北村匠海)は「みんなみたいな情熱は、僕にはなかった。ちょっと悔しいよ」。数日後、いせたくや(大森元貴)が訪れ「また一緒に仕事を」と提案したものの、聞く耳を持たない。柳井のぶ(今田美桜)の「やってみたらえいがじゃない」にも「僕の仕事に口出ししないでくれ」と珍しく強い口調で反論。以来、夫婦の仲はギクシャクし…という展開。
のぶは帰宅が遅い日が続く。嵩は漫画に行き詰まり、八木信之介(妻夫木聡)の雑貨店へ。のぶの姿に目を疑った。八木は「少し前から手伝ってもらってるんだ。のぶさんは、おまえに好きなことをやらせるために、2人分働いてるんだよ」。嵩はショックだった。
帰りは雨。嵩はのぶを抱き締め「のぶちゃんばっかり、苦労かけてごめん」。のぶは「苦労らあて、思うてないで。たまたま今、描きゆう漫画が売れんだけやろ。それやったら、何でもやってみればえいのに」「人を喜ばせるのって、漫画だけに限らんと思う」――。
2人が濡れた体を拭き合っていると、近くに雷が落ち、停電。のぶは懐中電灯をつける。ライトが嵩の顔に当たり「まぶしい」。のぶは「ごめん」と懐中電灯を手でふさぐ。
のぶ「(手が明かりで透け、赤くなり)嵩さん、見て。ほら、血が流れゆう」
嵩「ホントだ」
のぶ「嵩さんも」
嵩「手のひらを…透かしてみれば…真っ赤に流れる…僕の血潮」
「おや?この詞…ほいたらね!」(語り・林田理沙アナウンサー)
「手のひらを太陽に」は作詞・やなせ氏、作曲・いずみたく氏。1961年(昭和36年)、やなせ氏が構成を担当していた日本教育(NET)テレビ(現テレビ朝日)の朝のニュースショーの“今月の歌”として発表。その年までに6回、NHK紅白歌合戦に出場していた人気歌手・宮城まり子さんが歌った。翌1962年(昭和37年)にNHK「みんなのうた」で放送され、1965年(昭和40年)には男性コーラスグループ「ボニージャックス」が歌い、大ヒットした。
「手のひらを太陽に」の作詞については、やなせ氏が自著やインタビューで述懐。夜、仕事場で懐中電灯を手に当てて遊んでいたといい、手が赤く照らされた。漫画家としては日の目を見ない頃だったが「自分に元気はなくても、血は凄い元気なんだなあ」と有名な一節が思い浮かんだという(PHP研究所「何のために生まれてきたの?」)。
倉崎CPは「夜、暢さんは先にお休みされていたようなのですが、今回はやはり夫婦の物語なので、『手のひらを太陽に』誕生も、2人で辿り着けたら、と考えていて。中園さんのアイデアで、雷と停電というシチュエーション、のぶも関わるドラマチックな展開が生まれました」。第90回(8月1日)のキスシーンに続き“オンボロの長屋”が舞台でもロマンチック。中園氏の筆が冴え渡っている。
「やなせさんは漫画家なのに漫画の仕事がない時期で、暢さんには心配を掛けたくないと仕事をしているフリをしたり。そんな葛藤の渦の中にいたからこそ、懐中電灯で照らされた手の赤い血の色を見て、元気がない自分でも生きてるんだと実感したというエピソードを知って、その葛藤は大切にしたいと思いました。だからこそ、『ぼくらはみんな 生きている 生きているから かなしいんだ』という詩も生まれたわけで。かなしみがあるからこそ喜びもあって。人間、生きているとかなしいことや苦しいこと、つらいことが度合いはあれど誰しも抱えているからこそ、この詩が今の時代でも歌い続けられているのかなとも思います」
SNS上には「『手のひらを太陽に』キター!」「えっ?ここからなの?」「何と!これから、あの歌ができるんかい」「懐中電灯から、あの歌詞のきっかけが!」などと驚きの声も上がった。
いずみ氏をモデルとした作曲家・いせたくや役は、3人組バンド「Mrs. GREEN APPLE」のボーカル・大森元貴が好演中。宮城さんが一部モデルとみられる歌手・白鳥玉恵役は、アイドルグループ「乃木坂46」の久保史緒里が演じる。
18日から第21週「手のひらを太陽に」。名曲誕生と久保の朝ドラデビューに期待が高まる。
「あんぱん」のぶ懐中電灯→嵩「手のひらを太陽に」歌詞“爆誕”ネット驚きも「ここから?」巧みな史実脚色
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