《「もう“関東”に行ったのか…」の声も》バラエティの「関東特集」は番組打ち切りの“危険なサイン”? 「延命措置に過ぎない」とも言われる企画が作られる理由

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 テレビ番組の改編期になると、視聴者の期待を集められなかった番組は無残にも打ち切られていく。バラエティは試行錯誤し内容を変えながら続いていくケースもあるが、企画内容によっては打ち切りの“危険なサイン”と言えるという。その1つが「関東特集」だ。その理由についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。 

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 25日夜、『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』(TBS系)2時間SPが放送されますが、今回のテーマは「関東で一番住みたい県はどこ?」。 

 その内容は、埼玉県の藤田ニコルさんVS茨城県の磯山さやかさんVS群馬県のタイムマシーン3号・関太さんVS栃木県のM!LK山中柔太朗さんが各県のプライドをかけて激突するというもの。「最も爆買いされている激安ローカルスーパーはどこ? 買い物かごパンパンな地元民のお買い上げ商品数トップを調査」「驚愕の激安物件が続々!都心に通える広々物件も夢じゃない『今すぐうちの県においでよ』ダービー」などのコーナーが予告されています。 

 しかし、このテーマと内容にこそ、一般的にはあまり知られていない「バラエティ打ち切り」への危険なサインが表れているのです。 

3月末スタートから数か月で試行錯誤の連続 

『タミ様のお告げ』のコンセプトは、「世の中に聞いた忖度のないリアルな意見 =『タミ様のお告げ』こそあなたの未来を良くする一番の良薬!この番組は…明日の自分のために国民のホンネを聞いてみる日本一『余計なお世話』バラエティ!」。 

 そのコンセプトと「関東で一番住みたい県はどこ?」という企画や、ローカルスーパーや激安物件の内容はかけ離れています。実際、『タミ様のお告げ』は当初、「芸能人ゲストにまつわるアンケートでランキングを発表していく」という内容だっただけに、3月24日の番組スタートからわずか数か月で大きく変わったことがわかるのではないでしょうか。 

 同番組の前回放送は7月28日で、前々回は6月23日。8月は25日の放送が初めてであり、このところ月1回ペースの番組となっています。その内容をさかのぼっていくと、「カルディ、行列ラーメン…食の夏祭り」「芸能人リアル金銭感覚」「焼肉きんぐの常連タミ様が社員にモノ申す」「関西VS関東 大検証」と試行錯誤の跡がうかがえました。 

 そもそも『タミ様のお告げ』は前番組の『THE MC3』が中居正広氏の不祥事や降板を受けてリニューアルして3月24日にスタートしたばかり。それでもMCに東野幸治さんとヒロミさん、アシスタントに「好きな女性アナウンサーランキング」1位の田村真子アナを起用するなど、TBSにとっては重要な番組の1つでした。 

 だからこそ業界内では「もう“関東”に行ったのか……」という驚きと落胆のような声があがっています。ではなぜ「関東で一番住みたい県はどこ?」という企画や、ローカルスーパーや激安物件のコーナーがバラエティ打ち切りへの危険なサインと言われているのでしょうか。 

「関東の個人視聴率」を確保したい 

 人口もスポンサー企業も多い東京での視聴率獲得が重要なことは言うまでもないでしょう。 

 しかし、東京の人々は仕事、会食、趣味、自分磨き、ネット発信などにかける時間が長く、テレビ番組をリアルタイムで見てもらうハードルは上がる一方。それでも「視聴率調査で重視される関東地区の個人視聴率を獲得するために、埼玉、千葉、栃木、群馬、茨城の人々をおさえよう」という戦略がセオリーの1つとなっています。 

 その最たるものが、この5県をフィーチャーした企画であり、なかでも名物グルメ、スーパー、小旅行あたりは基本のコンテンツ。地元での局地的な高視聴率のほか、ライバルとなる隣県、さらに東京でも中高年層で一定の数字が期待できるため、関東地区の視聴率として壊滅的な状況を回避しやすいところがあります。 

 ただ、東京や神奈川の人々にとって積極的に見たい内容ではないことが多く、特に若年層にとって「テレビはつまらない」と感じる理由の1つにあげられやすいのも事実。また、「関東以外の視聴者を軽視している」とみなされることも多く、「キー局が本格的に関東ローカル化している」と未来を危ぶむ声も少なくありません。 

「延命措置」だけでない複数の目的 

 つまり、本当はできれば避けたい企画であり、「背に腹は代えられぬ」という現実がうかがえますが、「延命措置に過ぎない」というのが現実的なところ。今回のような関東の特集は「ヒット企画を探し当てるまでのつなぎ」「新番組の準備期間を稼ぐ」「MCやレギュラー出演者に努力したという姿勢の提示」が事実上の目的となるケースが続いています。 

 ちなみに中京テレビ制作の『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日本テレビ系)、読売テレビ制作の『秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系)は、在名局・在阪局の番組だけあって関東だけでなく全国が対象。もともとそれが番組コンセプトのため、キー局による関東の特集のような強引さはなく、エンタメとして受け入れられています。 

 本当は『タミ様のお告げ』も延命措置のような関東の特集ではなく、思い切った企画を仕掛けていきたいところ。それが現状叶っていないところにかなりの危機的状況がうかがえますし、スタッフも出演者も本意ではないかもしれません。 

 決して「関東の特集が良くない」ということではなく、問題は不振から本来のコンセプト無視で採用してしまうこと。そんな戦略は賢くなった現在の視聴者に通用しないだけに、今こそスタッフの企画力が試されているように見えます。 

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。 

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