単純な「ストーリーのネタバレ」だけじゃない?
2025年7月18日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』を受けて、SNSでは続々と鑑賞報告が上がっています。そのなかで目立つのが」「ネタバレは書かないけど……」「詳しくは言えないが……」といった、ネタバレに配慮した投稿の数々です。
『鬼滅の刃』の原作マンガは2020年に完結しており、多くのファンがすでに物語の全容を知っているにもかかわらず、なぜここまでネタバレへの配慮が見られるのでしょうか。
●アニメ派への従来の配慮
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』を楽しみにしているファンは、大きくふたつに分かれます。原作マンガで物語をすべて知っている「原作勢」と、マンガを読まずアニメでしか物語を追っていない「アニメ勢」です。
原作マンガが完結から5年近く経った現在でも、「原作読んでないから3部までネタバレ見ないように気を付けたい」「原作読んでないからネタバレ回避のため初日参戦」といった声が相次いでいます。こうしたアニメ派のファンにとって、SNSでのネタバレは物語の楽しみを大きく損なう要因となるため、原作既読のファンが配慮するのは当然のマナーといえるでしょう。
しかし今回注目すべきは、原作をすでに読んでいるファンに対しても、ネタバレ配慮が必要だという声が上がっていることです。
●原作勢にも必要な配慮とは
原作をすでに読んでいるファンに対するネタバレ配慮が必要な理由は、主にふたつあります。
ひとつは、これまでのアニメシリーズを踏まえると、原作マンガにはないオリジナルの演出が追加される可能性があることです。これまでのアニメシリーズでは、原作マンガにはないオリジナルの演出や補完シーンが数多く追加され、例えば『柱稽古編』第1話冒頭では、不死川実弥と伊黒小芭内が謎の鬼を追うアニメオリジナル展開が描かれ、原作既読者にも新鮮な驚きを与えました。こうした前例を踏まえると、『無限城編』でも原作既読者にとって「未知の体験」が用意されている可能性が高いのです。
もうひとつは、3部作の『無限城編』がどのような構成で映画化されるのかを楽しみにしているファンが多いことです。原作で物語を知っていても、「どこで区切るのか」「どのエピソードにどれくらい時間を割くのか」といった映画独自の構成は、原作勢にとっても重要な関心事となっています。
●ネタバレの境界線をめぐる議論
こうした背景から、「何がネタバレにあたるのか」について議論も生まれています。話題となったのは、当メディアの記事に対する、とあるファンのヤフーコメントでした。映画の満足度を語るとともに、映画の構成や時間配分について記述していたことから、「これはネタバレである」という指摘と「ネタバレとは言えない」という意見が対立し、コメント欄では賛否を集めていました。
興味深いのは、コメント主に対して多くのフォロー意見が寄せられていたことです。「ネタバレしない感じでわかりやすく見たくなる解説ありがとう」と感謝する声や、「原作完結済みなのだから問題ない」という反論、さらには批判コメントに対して「ネタバレが嫌なら感想コメントを読まなければいい」という根本的な疑問まで、さまざまな角度からの意見が交わされています。
●多様な楽しみ方への理解
同じ作品を愛するファン同士でも、楽しみ方は人それぞれです。物語の内容を知っていても映像化での新たな発見を求めるファン、構成や演出の工夫を純粋に楽しみたいファン、そしてアニメでしか物語を追っていないファンなど、さまざまな立場の人が共存しています。
今回の『無限城編』公開を機に見えてきたのは、完結作品の映像化における「ネタバレ」の概念が従来よりも複雑になっているということです。第二章、第三章の公開に向けて、こうした議論がどのように発展していくのか注目されます。
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