「中居氏側は一線を越えた」 Aさん側を激怒させた“文書の問題点”と迫られる「終戦か、法廷か」

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元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士が指摘

 元タレント・中居正広氏と、同氏から性被害を受けたとされる元フジテレビ女性アナウンサーAさんを巡る場外乱闘が激化している。週刊文春が、中居氏による性暴力の生々しい実態が記載されているというAさん側の弁護士からの「通知書」の内容を報じると、中居氏側の弁護士はAさん側の「守秘義務違反」を示唆する反論文を公表。これに対してAさん側弁護士が初めて実名を明かし猛反論するという展開に、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「中居氏側は一線を越えた」と指摘した。

 深刻なトラブルでは当事者の応酬も激しくなりがちだが、それでも越えてはならない一線がある。しかし、今回の中居正広氏側の文書は、弁護士名義でありながら、その一線を越えたのではないか。

 今月6日、中居氏側弁護士は「中居正広 “性暴力”の全貌が分かった!《通知書に「不同意性交等罪」の文字が》」と題する週刊文春報道を受けて文書でコメントを発表した。だが、それを読むと気付くことがある。

 中居氏側は報道した週刊文春には抗議していない。抗議の対象はAさん側の弁護士なのだ。

 中居氏側文書はまず記事にあるAさん側弁護士からの「通知書」の内容などを否定したが、これを報じた文春への批判の言葉はない。代わりに中居氏側弁護士が記したのは次の一文だった。

「相手側代理人においては、相手方女性に対して守秘義務を遵守させるべき立場にありながら、結果として週刊誌等の第三者媒体による情報開示が継続的に発生しておりますことは、極めて遺憾です」

 さらに中居氏側は、中居氏が体調不良で関係者が連絡しても「なかなか反応が得られない」などと報じる今月4日発売の『週刊ポスト』にも触れ、「この情報は、当職らが相手方代理人にのみ伝えていたものであり、他に発信・公表等を行っていないものです。個人情報が『週刊ポスト』に掲載されたことは極めて遺憾です」とも主張した。

 これらの中居氏側弁護士の文書は、直接的な表現は避けているものの、一般の読者が普通の読み方で読んだ場合「AさんやAさん側弁護士が守秘義務に違反して雑誌に情報を流した」と批判するものと理解される可能性が高い。その場合、Aさんやその弁護士が「義務を破る人間」だという印象を与えその社会的な評価を傷つけることになる。

 他者の名誉を傷つける「名誉毀損」は民事上の責任だけでなく、刑罰の対象になるおそれもある行為だ。一方でその内容に公共・公益性があり、真実であるか真実と信じても仕方がない理由があることを示す「証拠」があれば、正当な表現行為として許される。そのため、中居氏側には次の重い問いが突き付けられることになる。

 AさんやAさん側弁護士が、守秘義務違反をしたと言える「証拠」はあるのか。

「名誉を傷つける表現」が法律上許されるには、その内容を信じられるだけの裏付け証拠が必要だ。我々弁護士も他者を批判する発信をする場合は「証拠」にこだわり、「証拠」のない臆測は流布しないよう注意している。

「証拠」を持っているのか…エスカレートした“場外乱闘”

 だが、この事案では、中居氏とAさんの示談が成立する前に「通知書」の内容をAさんの関係者に知らせたとしても、守秘義務が発生する前だから問題ない。文春記事にも「通知書」を編集部に持ってきたのは、事案の直後からAさんの被害報告を受けていた「番組スタッフ」と書かれている。また、週刊ポストが報じた「中居氏の近況」に至っては、中居氏と接点がある関係者なら広く情報源となり得る内容だ。

 そして、Aさん側弁護士は「あたかも被害女性であるAさんや代理人である当職が守秘義務に違反しているかのような表現がありますが、Aさんも当職も守秘義務に反する行為は今回もこれまでも一切しておりません」と中居氏側弁護士の文書を全否定した。

 では、中居氏側はこれらを覆すような「証拠」を持っているのか。万一、「証拠」もなくAさんやその弁護士の名誉を傷つける発信をしたのなら、中居氏側は重い法的責任を負う事態に陥るおそれがある。Aさん側弁護士は中居氏側への反論コメントでこう述べた。

「もし中居氏側が当方の守秘義務違反を主張するのであれば訴訟等の法的手続きにおいて事実の確定を求めるべきです」

 中居氏を巡る場外乱闘はエスカレートし、もう「場外」で争う段階ではなくなったようだ。「乱闘」自体を終わりにするか、それとも「場外」ではなく「法廷」で闘うか。中居氏は今、二者択一を迫られていると思う。

□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。昨年4月末には、YouTube「西脇亨輔チャンネル」を開設した。西脇亨輔

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