「主人公がつくった戦闘機が人々を殺した」と…映画『風立ちぬ』が呼んだ“賛否”のゆくえ

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 戦後80年の節目を迎えた今夏、スタジオジブリの映画『火垂るの墓』(1988年、高畑勲監督)が、国内で初めてネット配信を開始した。実在の航空機設計者・堀越二郎をモデルにした主人公が登場する『風立ちぬ』(2013年、宮崎駿監督)もまた、戦争を扱ったジブリ作品として知られている。

 公開当時に同作が賛否両論を呼んだ背景、宮崎駿監督が語っていたこととは。アニメ評論家・藤津亮太氏の著書『 アニメと戦争 』(日本評論社、2021年)から一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/ 続きを読む )


映画『風立ちぬ』より © 2013 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDHDMTK

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様々な議論を呼んだ、戦争協力者でもある主人公・二郎の在り方

 映画『風立ちぬ』が公開されると、兵器の設計技師という点で戦争協力者でもある二郎が、自分の仕事に葛藤を見せないという点は様々な議論を呼んだ。例えばベネチア国際映画祭でコンペティション部門の審査員を務めた音楽家の坂本龍一は、審査の様子などについてこう語っている。

〈「イタリアの飛行機設計家の登場などが好感を集めた一方、主人公がつくった戦闘機がアジアの人々を殺したり、若い兵隊が戦争で犠牲になったりしたという視点が欠けていたのが気になった。中には非常にナショナリスティック(国家主義的)な映画と受け取った人もおり、意見は二つに分かれた」(朝日新聞2013年10月18日付夕刊)〉

 また毎日新聞は2013年8月21日夕刊「賛否両論『風立ちぬ』『感動』×『違和感』 キーワードは『ピラミッド』」で、以下のような意見を紹介している。

〈「メディアジャーナリストの渡辺真由子さん(38)は「宮崎監督のエゴの押しつけという印象を持ち、違和感と後味の悪さが残りました』と辛辣だ。『戦争を肯定する映画ではありませんが』と前置きしつつも『銃や兵器は権力の象徴、破壊や暴力をもたらすものです。二郎はそんな戦闘機の開発に夢を見る。それを描くことに反対ではありませんが、二郎の苦悩を描ききれていないようで疑問を感じます』と手厳しい」〉

 こうした批判に対して宮崎監督は取材の中で以下のように答えている。

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