クレバーな戦い方
午前中からもう40手以上進んでいる。研究でカバーできるところはさっさと指す。来たるべき局面に備えて、できるだけ持ち時間を温存しておくのが現代流のクレバーな戦い方だ。先後が決まっている順位戦、とりわけ角換わりではその傾向が強い。
2回戦最初の本局は7月30日、東京・将棋会館「特別対局室」で行われた。両者、黒星スタート。記者室で何気なく携帯を開くと、太平洋側に津波警報発令中と表示されていて驚がくした。震源はカムチャツカ半島付近。漠然とした不安でしばらくはそわそわした。東日本大震災が脳裏をよぎる。両対局者は知る由もなく、対局室で集中していた。
中村太地八段が僅か1分で[後]3五歩(本日終了図)と突っ掛けた。千田翔太八段に現状を分析してもらった。「中村八段の作戦は、先手の[先]6九玉~[先]7九玉を手損だと主張する積極的な指し方です。メリットは中央が手厚いこと、デメリットは2筋の歩交換を誘発すること。こちらの立場としては、[後]3五歩の反撃にどう対応するかが最初のポイントでした。中村八段の研究手順であることは明らか。しかし基本的には先手…
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