単発ドラマ「介護スナックベルサイユ」が、宮崎美子主演で連続ドラマ化され、10月11日(土)から東海テレビ“土ドラ”(毎週土曜夜11:40-12:35、フジテレビ系)で放送されることが決定。ヒロイン役の宮崎、そして宮崎とは初共演となるダンスボーカルユニット「原因は自分にある。」のメンバー・杢代和人が作品の見どころなどについて語った。
■年を重ね変化していく考え方や心の機微を描く
3月に特別企画として2回にわたって放送され、多くの反響を呼んだ「介護スナックベルサイユ」は、清水有生が原作・脚本を担当した“ヒューマン・ファンタジー”。年を重ねることで変わっていく考え方や、心の機微を丁寧に描いていく。
ヒロイン・上杉まりえを演じるのはデビュー45周年を迎える宮崎で、連続ドラマの主役でスナックのママを演じるのは初めて。また、「仮面ライダーギーツ」(2022年-2023年、テレビ朝日系)で一躍注目を話題となった「原因は自分にある。」杢代の出演が決定。ベテラン俳優と注目の若手俳優がどんな化学反応を起こすのか期待したい。
■“魔法のワイン”で“人生最期の夢”へと誘う
舞台となる「介護スナックベルサイユ」は、どこにでもあるスナックのように見えるが、介護士資格をもつスタッフが常駐するなど、立派な介護現場。訪れる客の大半が要介護認定を受けているため、点滴を打ち、血圧を測り、リハビリをする客も。ビールは誤嚥を防ぐため、とろみ剤を混ぜて提供することもある。
中でも注目は、まりえ(宮崎)が仕入れから担当している特製ワイン「SEE YOU IN MY DREAMS」。飲めるのは生涯でたった1度、それもお1人さま1杯だけ。飲めば、会いたい人に会える“魔法のワイン”で、訪れる客を“人生最期の夢”へと誘っていく。夢を堪能した後には、それを象徴する料理が振る舞われる。これが、道先案内のフルコースだ。
また、訪れる客の生きざまも魅力にあふれており、大衆演劇一座の役者、といっても脇役専門で、馬の後ろ脚をやらせたら右に出る者はいなかったという男性や、服飾デザイナーとして成功し都内のタワーマンションに1人で暮らす女性、権力の歪みを指摘し続けた大手新聞社の女性記者ら。
ベルサイユを訪れてワインを注文し、これまで誰にも話せなかった、内に秘めた思いを切々と語り出す。これら客の送迎を担当するのが、杢代演じる大学生・神代大輝。送迎の車から降り店に入ると、まるで別人のように輝きを取り戻す高齢者たち。その姿を目の当たりすることで、社会の闇に溺れそうになる大輝がどう変わっていくのかも見どころとなる。
■上杉まりえ役・宮崎美子
「介護スナックベルサイユ」のママ。元は大病院の看護部門のトップ、総婦長として働いていたとされるが、はっきりしたことは誰も知らない。訪れる客の大半が要介護認定を受けていることから、看護師や介護士資格をもつスタッフを雇い、リハビリのサポートや血圧測定など介護を提供している。
客の体調に合わせて栄養剤などをブレンドした“特製の点滴”も用意していて、まりえが、知り合いの医師に頼んで処方してもらっている。また、まりえが仕入れから担当する「SEE YOU IN MY DREAMS」というワインは珠玉の1杯として知られ、これを目当てに客が訪れる。店は、まりえの住居を兼ねる。料理が苦手。目玉焼きを作るのも苦労するほど。
●宮崎美子 コメント
――2025年3月の特別企画が連続ドラマに、そして今作では主演を演じます。まりえさんに変化はありますか?
「介護スナックベルサイユみたいな場所があったら元気になれるよね」など、3月の放送後にいろんな声を頂いて、関心を持ってくださる方が大勢いらっしゃいました。連続ドラマ化されて、じっくりと描かれるのが楽しみです。主演を演じること自体は、そんなに意識はしていません。でも、今回はちょっとバージョンアップしているんです。
前作は、高齢者の皆さんにとって懐かしいと感じるような、昭和の雰囲気を残したスナックをお借りして撮影しました。温かみが感じられるお店でしたが、今回はもうちょっとキラキラッとしているらしくて! まりえさんの衣装もグーンと華やかになると聞いていますので、そんなところも楽しんでいただければと思います。
――「介護スナック」とはどんな空間で、どんな魅力があるのでしょうか?
「介護」を掲げているスナックは実際にあり、介護士の資格を持ったスタッフがお客さまのお手伝いをするそうです。ベルサイユも同様で、介護の場としていろんな目配りをしています。ベルサイユに行けば友達にも会えるし、頑張ってお店に行こうと思えるだけで、高齢者の方も元気になれると思います。まさに安心して楽しめて、元気になって帰っていただける場所ですね。ご家族にとっても、大事な場所になると思います。
――「介護スナックベルサイユ」に客として訪れるとしたら、どんな願いをかなえたいですか?
最期に会いたい人は?とか、最期に食べたいものは何か?など、いろいろ浮かんできて、決められないんですよね。でもね、小さいころに両親に連れていってもらったレストランのハンバーグが食べたいかな。「新世界グリル」という店なんですけどね。子供にとってハンバーグって、夢のようでしたから。
――視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
ドラマをご覧になりながら、「自分だったらどんな人に会ってどんな話をしたいかな?」というふうに落とし込んでいただけると、味わい深いのではないかと思います。結局、それは自分が1番大事にしているものが何かということにつながるので、そういうことを自然に考える時間、ひとときになればいいなと思っています。
■神代大輝役・杢代和人
大学生3年生で「介護スナックベルサイユ」を訪れる客の送迎を担当するドライバー。FXに手を出し巨額の損失を抱えてしまい、危険なアルバイト、いわゆる闇バイトに手を出してしまう。
凶悪な組織犯罪グループに追いかけられる中、身を潜めるように福祉タクシーのアルバイトを始め、それがきっかけで「介護スナックベルサイユ」に転がりこむ。送迎の車の中ではぐったりしている高齢者が、店に入った途端、生気を取り戻していく様子を見て、不思議に思っている。
●杢代和人 コメント
――オファーを受けた時の気持ちを教えてください。
夢のようなスナックだなと。僕は21歳ですが、こういう場所があったら本当に楽しいだろうなと思いました。出演が決まった時はとてもうれしかったです。僕が出演することで、同世代の方々にこの作品を届けられるように頑張りたいなと思いました。
――神代大輝は、どんな役どころ?
ごく普通の大学生ですが、お金のトラブルを抱えてしまい、普段しないようなアルバイトに手を出してしまいます。台本を読んだ時は僕もびっくりしたのですが、知らず知らずのうちに巻き込まれてしまい、気づいたら大事になっていたというのは、実際にあり得ることだなと思って。今時の若者像もリアルにお伝えしたいと思っています。
――宮崎さんと初共演、どんなお気持ちですか?
宮崎さんは、僕が小さいころからテレビで拝見していた方なので、まさか共演させていただけるとは思ってもみませんでした。今回は宮崎さんとご一緒のシーンも多いので、いろいろ学ばせていただき、しっかり吸収して自分の演技に反映したいと思っています。
――「介護スナックベルサイユ」に客として訪れるとしたら、どんな願いをかなえたいですか?
もう会えない人と会いたいと思います。僕は中学生のころから芸能活動を始めたのですが、忙しくなって毎年帰省できなくなった矢先に、祖母が亡くなって…。もし会えるなら、もう1回祖母に会って、大きくなったよということを伝えたいと思います。
――視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
「介護スナックベルサイユ」は、心温まる場所だと思っています。人生の最期に誰に会いたいか、そしてその人とどんな会話を交わすのかという物語は、僕の同世代をはじめ、年齢に関係なく感じるものがあると思います。このドラマを通して、人生を振り返ることの大切さや、人と人とのつながりを大事にしながら、日々をしっかり生きていくことの大切さを伝えていきたいと思っています。
■「介護スナックベルサイユ」ストーリー
東京郊外の少し寂びれた繁華街。夕方になると店のネオン看板が灯る。「介護スナックベルサイユ」。その名の通り、客の大半は要介護認定を受けた高齢者だ。今宵、1番乗りでやってきたのは、車いすの老人。
「ようこそ、ベルサイユへ」。店のママ・上杉まりえ(宮崎美子)が、優しい笑顔で出迎える。店内を見渡せば…ボックス席では血圧測定が、片隅では平行棒を使って体操の指導が行われている。カウンター奥の棚には、ボトルキープされた点滴が並ぶ。一見どこにでもあるスナックのようだが、ここは立派な介護現場。
それもそのはず、スタッフは看護師や介護士、ケアマネージャーに管理栄養士と、誰もがスナックと医療現場の二刀流だ。点滴を打ってもらったり、とろみ剤入りのビールを飲んだり、介護が必要だった客がみるみるうちに生気を取り戻し、ベルサイユのひと時を楽しんでいく。
「今夜はあのワインをご希望です」。やって来たのは常連の五郎さん。大衆演劇一座の役者で、医師からもってあと1週間と宣告されている。まりえが、五郎の前におかれたグラスにゆっくりとワインを注ぐ。「会いたい人はお決まりですか?」と、まりえ。「ああ、きれいな色だな…」。ワインを飲み干す五郎。ラベルに記された「SEE YOU IN MY DREAMS」の文字。
まりえが提供するのは、生涯で1度だけ、しかも1人1杯と決められた特別のワイン。これを飲めば、どうしても会いたかった人に会うことができるのだ。人生最期の夢に誘う“魔法のワイン”…。
「お客さん、あのスナックなんか変ですよね?」。客の送迎を担当する大学生・神代大輝(杢代和人)は、店内の不思議な現象に戸惑っていた。さっきまで元気に会話をしていた客のすみえさんは、後部座席で、酸素吸入器のマスクをつけて座っている。
一方、魔法のワインを希望した五郎さん、会いたかったのは大衆演劇のトップスター。冥途の土産にと、脇役専門だった五郎さんは主役の交代を依頼した。「冷めないうちに召し上がれ」。まりえが持ってきたのは「生姜鍋」。いつもは薬味として脇役の生姜が、主役の鍋だ。
夢の後は、最期の願いを象徴する逸品が待っている。身体が思うように動かず不自由な思いをしているけれど、人生を楽しみ、希望をもって毎日を送りたい。そんな方々が集う「介護スナックベルサイユ」。今宵、扉を開けてみませんか…。まもなくオープンです!
■プロデューサー・河角直樹(東海テレビ)コメント
“最期に会いたい人”と会い、“人生の真実”を知ることのできる場所。「介護スナックベルサイユ」が再び開店です。魔法のワインに誘われた悲喜こもごものヒューマン・ファンタジーの制作に、再び携われることを大変うれしく思います。
連続ドラマとなることでより多くの人物が訪れ、そこで繰り広げられるさまざまな人生模様には、視聴者の皆様が身近に感じ、過去の経験と重なるようなこともきっとあると思います。そして、1人1人の人生が込められた“最後の晩餐”に舌鼓を打っていただければ幸いです。
制作にあたってデイサービスなど介護施設を取材すると、それぞれの人に即したさまざまな介護の形がありました。そこにはカジノやパチンコのような、およそ介護のイメージとは異なる施策まであります。介護を介護と感じさせず、より充実した日々を送ってほしいと工夫を重ねる施設の方々の努力には、頭が下がる思いでした。
ドラマ自体はファンタジーでも、ベースに流れる感情には、介護の現場で働く皆様のリアリティをしっかり反映させていこうと思います。私自身も同年代の友人と飲むと、身内の介護と自らの病気の話題ばかりの歳となりました(だったら飲むなという話ですが)。そんな生活の実感を込めて、「最期まで前向きに歳をとろう!」という思いを、ドラマを通じて視聴者の皆さまと共有できれば幸いです。
■プロデューサー・鵜澤龍臣(東海テレビ)コメント
スナックという空間は魔法を持っています。肩書きや年齢を超えて人が集い、語って、泣いて、笑って、気がつけば心が軽くなる。そこに“介護”というテーマが重なることで、「老い」を「怖いもの」ではなく、「人生を生き抜いてきた証」と思ってほしい…。ベルサイユのスタッフたちは、そんな思いで、お客さまをおもてなししていきます。
このドラマはお年寄りの「最期に会いたい人」と「思い出の料理」に寄り添いながら、きれい事だけで収まらない人間模様を描く、完全オリジナルのファンタジー。ドラマの中では、お客さまの過ごした店でのひとときが、現実なのか幻想だったのかは分かりません。ただ1つ言えることは、誰もが晴れやかな顔で店を後にしていくということ。
“人生 100 年時代”、家族や自分自身のこととして、誰もが向き合うこととなる「介護」や「終末期医療」について、あらゆる世代の皆さんが考えるきっかけになるように。さらに、年齢を重ねていくことそのものにも希望を感じてもらえるようなドラマに、少しでも近づけられればと思っています。
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