恋ひてゐるごとき=染野太朗

恋ひてゐるごとき=染野太朗

 大崎瀬都歌集『みづぐるま』を読んだ。本歌集の大きなテーマは父の死と母の看取(みと)りであり、それらの歌からにじむ心情の機微にはやはり胸を打たれるのだが、ただ、その側面だけを強調するとこの一冊を読み誤るようにも思う。 ・青春の日々なればときにシベリアを激しく恋ひてゐるごとき父  作者の父は酔うとよくシベリア抑留の体験を語っていたよう...