/150 辻村深月 画 佐伯佳美

/150 辻村深月 画 佐伯佳美

 ドアの向こうに山本の姿が消えるその時に、持っていたビールの紙袋が未練がましく気になって、ああ、やっぱ意地張らずにビールだけもらおうか、と考える。今からでも、声をかけたら間に合う。  その袋だけ置いていけ、と頼むかどうか。迷ううちにドアが閉まり、山本の姿が視界から消える。この期に及んで、そうなった瞬間に、途端にビールが惜しくなり、後...