
「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
何の前文の一節かお分かりだろうか。
7月20日に行われた参院選では、参政党が憲法をゼロからつくる「創憲」を掲げたことで、図らずも現行の日本国憲法にも光が当たることとなった。
参政党の憲法構想案には現行憲法にある人権規定がほとんど明記されず、個人よりも公益を重視した内容から、インターネット上では「トンデモ憲法」などと指摘されている。
憲法の理念について30年近く普及活動をしている「憲法の伝道師」こと伊藤真弁護士はどう見るのだろうか。話を聞いた。
<主な内容>
・「非国民」のリスク
・憲法づくりの約束事
・どこいった?「法の下の平等」
・憲法を守るべきなのは誰か
・「愛国少年」が気づいた憲法の価値
・戦後80年で迎えた分岐点
「トンデモ憲法」に感謝した二つの理由
確かにツッコミどころ満載で、「論評に値しない」と無視する法律家も少なくありません。
ただ参政党の構想案は、多くの支持者が約2年かけて作り上げたもので、異なる意見であってもまずは尊重すべきだと思います。
わたしは二つの意味で、この構想案が出てきた時に、ありがたく感じました。
一つ目は国民から遠かった憲法を「自分ごと」として考えるきっかけになったことです。
ボトムアップで主体的にこの国の憲法を作ろうとする発想は、明治憲法制定前に自由民権運動が起こり、各地で「私擬憲法」と呼ばれる多くの私案が作られた時代の雰囲気に似ていると感じました。
そして二つ目は、比較対象ができたことによって、日本国憲法の良さがより際立ち、理解を深める契機になると感じたことです。
かみ合わないワケ
参政党は、その後の日本国憲法を「欧米の価値観の押しつけ」と位置づけ、「日本独自の価値観に基づいた憲法を作ろう」という感覚で構想案をまとめています。
しかし、学者たちや法律家がいくら「憲法の体をなしていない」と批判したところで、「近代憲法の本質とは何か」という議論自体を飛ばされてしまっているので、話はかみ合わないのです。
参政党の構想案と日本国憲法で決定的に異なる点があります。
それは、近代の立憲主義における憲法は、異質な他者との共存を目指すための方法として考え出されましたが、構想案はこれとは対極にあることです。
一読して、構想案は「日本人ファースト」の国を目指す「同好会のメンバー規約」のような印象を受けました。
構想案に欠けているもの
同じ考えを共有…
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