『サマーウォーズ』の高校球児←えっ、そんな奴いたっけ? 地上波勢は意外と知らない「幻」のキャラクター

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実は延長15回を完投した怪物ピッチャーが出ていた

 2009年に公開された夏の名作『サマーウォーズ』が、2025年8月1日(金)の「金曜ロードショー」で放送されます。細田守監督にとって初のオリジナル長編アニメーションであり、その名を国内外に知らしめた代表作ですが、実は地上波ではなかなかお目にかかれない「幻のキャラクター」を知っていますか?

 本作は、仮想世界「OZ」と現実世界を舞台に展開されるSF作品です。「OZ」は世界中のインフラと密接に結びついた巨大ネットワーク空間で、そのセキュリティを破る暗号を、主人公の「小磯健二(演:神木隆之介)」がうっかり解読してしまったことから物語は動き始めます。

 夢のような仮想世界「OZ」は公開当時、大きな話題を呼びました。その一方で、物語の舞台となる長野の田舎で繰り広げられる家族ドラマも魅力のひとつです。近未来SFと古き良き日本の風景を融合した独自の世界観は、多くのファンを惹きつけ、今なお「夏に見たいアニメ」の定番として支持され続けています。

 その人気ぶりから地上波で何度も放送されてきた本作ですが、ノーカットでない放送回では、尺に収めるための編集によって、あるキャラクターの登場シーンが削られがちです。それが本作のヒロイン「篠原夏希(演:桜庭ななみ/現:宮内ひとみ)」のはとこであり、上田高校野球部のエース投手でもある「陣内了平(演:安達直人)」でした。

 物語は、健二の暗号解読によって世界が混乱に陥り、仮想空間で暴走するハッキングAI「ラブマシーン」と、それを止めようとする「陣内(じんのうち)家」の奮闘へと発展していきます。了平もその陣内家の一員ではありますが、本編では甲子園を賭けた県大会に出場中であり、「ラブマシーン」とはほとんど関わりがありません。

 さらに出番の多くがTVモニター越しだったため、地上波向けの編集では、うってつけのカット対象になってしまったのでしょう。実際、ノーカット版を見たことがない人のなかには、了平の存在をまったく知らないという人も少なくありません。

 しかし了平の活躍ぶりは、本編のメインストーリーとは別軸で、もうひとつの熱いドラマを展開していました。県大会準決勝では、なんと被安打30を喫しながらも延長15回を完投し、11対10で試合を制します。さらに続く決勝戦でもひとりで延長15回を投げ抜き、奇跡の大逆転でチームを24年ぶりの甲子園へと導いたのです。これがスポーツアニメであれば、間違いなく主人公級の活躍だったでしょう。

 また物語全体を通して、高校野球の中継は「ラブマシーン」によって引き起こされる非日常と、夏の風物詩らしい日常とを鮮やかに対比させる役割を果たしていました。そして了平というキャラクターも、画面に登場するたびに強い印象を残します。インタビューでは上機嫌に受け答えし、ピンチでは情けない顔を見せ、帰郷の際には人目もはばからず号泣する……。そんな豊かな表情の数々は、張り詰めた空気を和らげる清涼剤のような存在感を放っていました。

 それだけに、地上波でカットされやすい存在なのが残念でなりません。もし今回の放送で了平の登場シーンが削られていたとしても、上田高校を24年ぶりの甲子園へと導いた彼の頑張りだけは、ぜひ心に留めておいてください。

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