【今週グサッときた名言珍言】
「ちょっと待って、待って。おしっこチビった」
(笑福亭鶴瓶/フジテレビ系「さんまのまんま40周年夏スペシャル」7月25日放送)
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33年ぶりに「さんまのまんま」に登場した笑福亭鶴瓶(73)。しかし、部屋に入るなり、明石家さんまから「あきまへんで、兄さん!」と責められてしまう。ひとしきり説教を浴び続けた鶴瓶が漏らした一言が今週の言葉だ。思えば33年前にこの番組に出演した際も、鶴瓶はさんまに説教されていた。
2人はさんまがデビューしてすぐからの付き合いだ。さんまがまだ19歳くらいの頃に出会った。2人が大阪に住んでいた頃、仕事で東京に向かう新幹線でよく鉢合わせになった。駅のホームにはファンが集まっていた。鶴瓶はそんなファンから差し入れにおにぎりをもらう。ファンからもらった食べ物は食べられないと、いぶかしむさんまに向かって鶴瓶は言った。
「たしかに何か変なもんが入ってるかもしれんしな。俺も怖いよ。でもな、俺はファンを信じてこれを食べんねん。見てるとこで食べてあげると喜んでくれるやろ」
電車が発車し、ファンが見えなくなると、食べかけのまま、そのおにぎりをしまった。さんまが「もう食べないのか」と問うと、鶴瓶は当たり前のように「見てないとこで食べてもしゃあないがな」と笑った(エムカク著「明石家さんまヒストリー1」新潮社=2020年11月17日発売)。
こうした鶴瓶の“偽善的”ともいえる、いわゆる「悪瓶」の部分を最初に世に広めたのがさんまだった。
鶴瓶は、そうやって後輩からイジられることをいとわない。極めつきは、まだ30代半ばだったダウンタウンと共演したとき。2人はMCである鶴瓶に「しゃべりが長い!」「ダラダラしすぎ!」などと容赦なくダメ出しをする。「勘弁してくれ、自信なくなるわ、なにもかも!」と言う鶴瓶へさらにダメ出しが続くと、ソファに突っ伏し、座布団を何度も打ちつけながら叫んだ。
「もっとおもろなりたい! もっとおもろなりたい!」(日本テレビ系「いろもん」98年6月6日)
長いキャリアの中で確立した「鶴瓶」像を背景に、自ら巧妙にスキをつくり、弱みをさらけ出していく。「若手に緊張されたら終わりだと思ってる」(ニッポン放送「笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ」10年10月24日)というのが、鶴瓶のお笑い哲学なのだ。
冒頭の番組で、さんまに散々“説教”され、イジられ続けた鶴瓶は「でも気持ちええやろ、こいつにもうガー言われたら、初めはちょっと嫌やってんけど、だんだんね、快感になってんねん」と、例の“悪瓶”顔で笑った。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)
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