音楽家で著述家のHAL(56)が、「終戦の日」の15日に東京・渋谷のPLEASURE PLEASUREで無料ライブイベント「SUMMER LIVE〜非戦〜」を初開催する。
音楽を通じて戦争のない未来を願うライブ。今年は戦後80年。沖縄・コザ(現沖縄市)で生まれ育ったHALが、多くの人が「非戦」という言葉を知るきっかけになればと企画した。
自身の幼少期は米兵が街を闊歩(かっぽ)していた。戦争を体験した祖父母が敗戦国の住人として嫌がらせを受けながらも、沈黙する姿を見てきた。「非戦は思想ではなく選択。非戦とは、『誰の命も奪わせない』という生き方の選択です」と説明。「戦わない。誰かを敵にしない。誰にも殺させない。武器より、楽器を。暴力より、表現を。支配より、共鳴を」と願った。
世界的に活躍した音楽家の坂本龍一さん(享年71)は「非戦」という著書を監修しているが、実は縁がある。坂本さんがアルバム「NEO GEO」(1987年)の制作のため、沖縄に滞在した時にHALはアテンドを担当。30年以上の月日が流れた2019年、米ニューヨークでひょんなことから再会し薫陶を受けた。「間接的ですが、お付き合いがあって僕が勝手に継承しようという気持ちです。非力ではありますが、『非戦』のスローガンが広がっていけばいい」
「今の若者は『戦争がどう』とか興味がないかもしれないけど、若い世代にできるだけ参加してほしいし、少しでも興味を持ってほしいから」と入場無料で実施する。代わりに、ライブの運営費用の一部をクラウドファンディングで募る。来年以降も継続開催する意向で「1回限りだと打ち上げ花火で終わってしまう。何十回とやることで定着させたい」と誓った。(加茂 伸太郎)
〇…ライブ当日、会場には寄付ボックスが設置され、戦争被害者支援への募金活動を行う。収益の一部と合わせて、国境なき医師団に寄付される。
◆HAL(ハル)1968年10月18日、沖縄県出身。56歳。琉球王朝時代から続く正当なユタ(シャーマン)。2005年から神奈川、09年から都内に拠点を移して活動。09年デビュー。年間90本近いライブ活動、講演会を行う。30日に新曲「名もなき祈り」を配信リリースする。
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