「雷の呼吸」修行前から鬼殺隊と関係があった!?
『鬼滅の刃』の「那田蜘蛛山編」で登場した「桃先輩」を覚えていますか? 彼は雷の呼吸の使い手である「我妻善逸」の兄弟子です。死にかけていた善逸の回想で登場し、桃を食べながら善逸に「消えろよ」と罵る姿から「桃先輩」と呼ばれていました。たった数秒の登場ながら、視聴者に強烈なインパクトを残した彼は、大きなふたつの罪を犯していました。
※この記事では『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の内容に触れています。ネタバレにご注意ください。
彼にとって、後から弟子になった善逸は邪魔な存在で、臆病者ですぐ逃げ出そうとする善逸をいびり、嫌っていました。しかし、善逸は基本の型「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃(いちのかた へきれきいっせん)」しか使えず、反対に桃先輩は「壱ノ型」だけ習得できません。そこで、師匠の「桑島慈悟郎(じいちゃん)」は、ふたりを合わせて「雷の呼吸」の継承者としますが、桃先輩は納得しませんでした。
のちに判明する彼の名は「獪岳」です。鬼殺隊の一員となりますが、あるとき、「上弦の壱」である「黒死牟(こくしぼう)」に遭遇し、命の危機を感じた獪岳は鬼になる道を選びました。この決断が原因で、桑島さんが「雷の呼吸」の継承者から鬼を出した責任を取り、切腹します。
この報せを受けた善逸は、怒りと悲しみを心に留め「無限城」へ臨みます。現在上映中の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』でふたりの激しいバトルや、お互いの想いがぶつかるシーンが描かれているので、詳しくは映画館でご確認ください。
獪岳は「鬼になる」という罪を犯しましたが、実は、それよりも前にもひとつの罪を犯していたことが、原作者の吾峠呼世晴先生によって語られていました。
桑島のもとで引き取られる前、獪岳は家すらなく泥をすすって暮らしていたところを「悲鳴嶼行冥(ひめじま ぎょうめい)」に引き取られます。当時、悲鳴嶼さんは孤児たちとともに、寺で暮らしていました。
ある日、獪岳は金を盗み、他の子供たちと揉めて外に出ます。そこで鬼と遭遇し、自分が助かりたいがために、悲鳴嶼さんが焚いていた藤の花の香炉を消し、鬼を招き入れました。
子供たちは次々と喰い殺され、追い詰められた悲鳴嶼さんは鬼を殴り殺しますが、唯一生き残った幼女「沙代(さよ)」が鬼のことをうまく伝えられず、悲鳴嶼さんは殺人犯として投獄、処刑を待つ身となります。この事件がきっかけで、悲鳴嶼さんは「親方様」こと「産屋敷耀哉」に救われて鬼殺隊に入りますが、子供への不信感が生まれてしまいました。
獪岳が鬼を招き入れなければ、寺の子供たちは鬼に殺されずに済み、悲鳴嶼が子供を信用しなくなるきっかけは生まれなかったかもしれません。
実はTVアニメ「柱稽古編」第7話で描かれた悲鳴嶼の過去にも、寺の子供たちのなかに幼少期の獪岳の姿がありました。作中では明確に「獪岳」「善逸の兄弟子」との描写はなく、エンディングクレジットも「寺の子どもたち」として獪岳役を務める声優の細谷佳正さんの名前がありました。
獪岳は、一見すると嫌悪感を抱くキャラクターですが、心のなかの葛藤や弱さは複雑な人間性を浮き彫りにします。劇場版やテレビアニメを観る際には、彼の行動の裏にある葛藤や、それが周囲にもたらした影響にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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