グラビアアイドル、タレント、女優として活躍した井上晴美さん(50)は「桜っ子クラブさくら組」のメンバーとして1991年にアイドルデビュー。笑顔を絶やさない明るいキャラクターが男女問わず当時の若い世代から根強い人気を誇った。その後は女優、タレントとして活躍する傍らで長野、熊本に移住。長野で生活した時まで東京まで往復6時間も車を運転して、子育てと両立させていたという。インタビュー【後編】では、近況や田舎生活の人知れぬ苦労、今後の芸能活動への意欲を語ってくれた。
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――現在は熊本でどのような生活を送っていらっしゃいますか?
3人の子どもたちと山で暮らしています。今はキュウリを収穫する時期ですね。あり得ないぐらいの量を収穫しています(笑)。大規模ではないですけど、ジャガイモ、トマト、バジルなど季節の野菜を作っています。近所の優しいおじいちゃん、おばあちゃんがおすそ分けしてくれるのがありがたいですね。
――会員制のスナックを開いていると聞きました。
そうですね。地味にやっています(笑)。お客さんはいちげんさんお断りで紹介制ですが、インスタで連絡を頂いたファンの方が身分証を事前に提示してくださったうえで、いらっしゃったこともあります。予約が入ったらお店を開ける感じですね。いろいろな方たちとの時間を楽しんでいます。
■駐車場に車を止めて仮眠
――井上さんは32歳の時にご長男の出産を機に、長野県内に住んでいた時期がありました。子育てと仕事の両立は大変だったと思います。
いやぁ、大変すぎてその時の記憶がない(笑)。当時は長野の自宅から東京まで車で片道3時間かけて移動していました。ドラマの撮影もやっていたので、疲れがひどい時はサービスエリアの駐車場に車を止めて仮眠をとっていました。取材の仕事の時は子どもを連れて行っていましたね。若いからできた(笑)。でも、育児と仕事の両立で私より大変なお母さんがいますしね。そういう方たちを見ると本当にすごいなと思います。


――長野には何年ぐらい住んでいたんですか?
4、5年ですね。長野に引っ越したのは1人目の子育てで不安だらけの時でした。最初はママ友の知り合いもいないし、孤独で。育児が楽しいと思えず過酷でしたね。赤ちゃんを抱っこして役場に「病院の小児科はどこですか?」って聞いたら、「子どもは内科に連れて行ってください」って。病院が少ないから内科の中で小児科の症状に対応するんですよね。小さな町なので小児科はなく、不安になりました。そういうことも確認しないと分からない。家はリンゴ畑に囲まれていて、スーパーやコンビニが近くになかったです。冬は寒すぎて外に出られないので、家の限られた空間で子どもを楽しませなきゃいけない。正直しんどいなと感じましたけど、不満を持っても解決しない。だったら都会に住めばいい。田舎で暮らす時は「ないものはないし、どうにかなる」と覚悟するしかないんです(笑)。
■コミュニケーションは大事だなあって
――環境に適応しようとする姿勢が大事なんですね。
でも、住み続けると東京では経験できない楽しいことがどんどん出てくるんです。近所にママ友ができて、いろいろな子育ての話や子どもの病気の話を聞くことで気持ちが楽になりました。畑で農業をやりたいなと思って、近くでトラクターに乗っていた人に「空いている畑ってありませんか?」って聞いたら、「ずっと使っていない畑をトラクターで耕しといたよ」って用意してくれたこともありました。地元の方たちはみんな優しいんですよ。コミュニケーションは大事だなあって。長野は大自然があって、温泉とお蕎麦がある。東京と違って静かに時間が流れる。素敵な場所です。
――お米も作っていらっしゃったと聞きました。令和の米不足のニュースが報じられた時はどう感じましたか?
お米を作ることで農家の方たちの生活が楽になる体制をつくらないと難しいですよね。私も実際にお米を作って感じたんですけど、稲刈りの機械とか莫大な金額がかかるんですよ。年に1、2度しか使わないので、JAや農機具メーカーがレンタルのシステムを実現できると違ってくる。農機具メーカーや行政からサブスクシステムで農家がレンタルできるようになると、負担が軽減できるのではないかと考えたりしています。

実際に、機械を製造している業者に「リースってできませんか?」って聞いたことがあるんですよ。でも、「うーん」って。機械が壊れた時の補償の問題とかあるみたいなんですよね。修理代も含む保険があるといいなと思いましたが、乗り気じゃなかった(笑)。農業に興味がある若い人たちって結構多いんですよ。今の時代に合わせてSNSを使って販路を確保できる能力がありますし、彼らの知恵を借りないのはもったいない。国や自治体の支援制度の問題もあると思いますけど、金銭的な問題で米作りを断念する人が多い現実を見ると、もったいないなと感じますね。

■即決でやります(笑)
――農業に3人の子育てに普段の生活がお忙しいと思いますが、芸能活動に力を入れることは考えていますか?
3人の子どもはだいぶ大きくなりましたし、アクティブに仕事をしたいなと思っています。ドラマ、映画のオファーを頂けたら、検討するじゃなくて、即決でやります(笑)。3人の子どもを産んでシングルマザーになり、年齢とともにできる役が変わってきます。こればかりはご縁なので興味を持っていただければありがたいですね。女優の仕事以外にも、熊本の情報番組などに出演して自分の人生経験を伝えることで、少しでもお役に立てればうれしい。受け身の人間なのであまり自分から売り込むのは得意でないですが、根性はあると思うので(笑)。いろいろなお仕事ができたらありがたいですね。
(聞き手・構成/平尾類)
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