東京都内に住むAさん(50代)に、ある日、消費者金融から一通の督促状が届きました。
多額の借金(500万円以上)の返済を求める内容で、Aさんは心当たりがなく、不安と戸惑いでいっぱいになりました。督促状を詳しく確認したAさんは、それが疎遠になっていた叔父(亡父の弟)の債務に関するものであることを知りました。
叔父は1年前に亡くなっていました。叔父には配偶者も子もおらず、Aさんの父(叔父の兄)は10年前にすでに他界しているため、法律上、Aさんが相続人になる立場にあったのです。
しかし、叔父の死も借金の存在も全く知らなかったAさんは、突然の督促状に大変驚きました。そして相談のため、すぐに筆者の司法書士事務所を訪れました。
相続放棄する前に知っておきたいこと
相談を受けた私たちは、まず状況を確認しました。
叔父が残した債務はかなりの高額ですが、叔父の遺産(プラスの財産)はほとんどなく、借金だけが残っているようでした。このまま何もしなければ、法律上Aさんが叔父の借金を背負い、返済しなければならない可能性があります。
そこで私たちはAさんに、「相続放棄」という手続きを提案しました。
相続放棄とは、その名の通り相続人の立場を放棄し、被相続人(亡くなった方)の財産も負債も一切引き継がないことです。そうすれば、Aさんは叔父の500万円超の借金を返済する義務から解放されます。
ただし、相続放棄をするとプラスの財産も一切受け取れなくなります。Aさんの叔父にはめぼしい財産はありませんでしたが、その点は事前によく考える必要があります。
相続放棄には期限があります。法律では「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」、つまり、「被相続人の死亡と自分が相続人であることを知った時から3カ月以内」に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
一般的には「被相続人が亡くなってから3カ月以内」…
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