映画「雪風 YUKIKAZE」の初日舞台あいさつが8月15日に都内で行われ、俳優の竹野内豊、玉木宏、奥平大兼、當真あみ、田中麗奈、中井貴一、脚本家の長谷川康夫氏、山田敏久監督が登壇。全国公開の喜びを語ると共に、撮影秘話などをキャスト陣が語り合った。
■竹野内豊「“助け船”という言葉の本当の意味を感じた」
本作は、日本が戦争していた頃に実在していた駆逐艦「雪風」の史実をもとに、激動の時代を生き抜いた人々の姿を描く人間ドラマ。ほぼ無傷で終戦を迎えた「雪風」の乗員とその周りの人間模様を豪華俳優陣が熱演している。
艦長を演じた竹野内は公開初日を迎え、「戦争というものが少しずつ皆さんの中で薄れていく中で、この作品を世に出すことができたことを光栄に思います」と感謝を述べると、「今までに何気なく使っていた“助け船”という言葉の本当の意味をこの『雪風』から感じました。多くの人々が救いを求めているこの時代に、改めて“助け船”を送り出せたことは必然だったのではないのかなと思います」と感慨深げに答えた。
また、「雪風」を知らなかったと話す奥平は「戦争中で緊迫したシーンもありますが、映画のところどころに彼らなりの幸せを楽しんでいるシーンがあって、それを演じている時に言葉にならない感情になったのを覚えています」と言葉を噛みしめながら語った。
そんな奥平は水が苦手だったことを玉木から明かされると、海に投げ出されるシーンに触れ、「なかなか怖かったですね。ライフセーバーの方々から『なにかあったら助けるから』という言葉をいただいてすごく頑張れました」と撮影を振り返った。
■兄弟役の當真あみと玉木宏「今日、初めまして」
この映画では「手紙」が重要なアイテムとなっている。手紙を読むシーンを聞かれた當真は「今はスマートフォンという便利なものがありますが、当時はそんなものはなくて時間もかかりますし、そういう不安な気持ちを抱えながら演じていました」と回顧。さらに手紙は玉木の直筆だったことが明かされると「現場では玉木さんとは一度もお会いしていなくて、『今日、初めまして』という感じで、やっと“お兄様と会えた”という気持ちです。なので撮影では映像を見ながら手紙を読みました。会いたいけど会えない距離感と、まだお会いできていないというリアルな距離感が混ざりながらいい感じにできたなと記憶しています」と朗らかな表情を見せた。
先日舞台あいさつに参加したという中井は「僕はまだ映画を見ていませんので、上映後のあいさつにすごいプレッシャーがありましたが、今日は上映前で同じ立場ということで、すごく楽な気分です」と話したにも関わらず「2回の舞台あいさつを聞いて、けっこういい映画になっていると思います」と自信を持って勧める姿に笑いが起こると、「僕も見るのが楽しみです」とコメント。さらに、「僕は個人的にまだ終戦になっていないと思っていて、世界がいつか平和になるまで努力をしていきたい」と思いを語った。
最後に竹野内は、「80年という節目に、人々の記憶の中から戦争という現実味が薄れていく中で送り出されるこの映画に、たくさんのメッセージが詰まっています。当時の生きていた人々がどのような思いで生きていたのか、活字ではなく映画を通して心情を皆さんに体感してもらうことで、多くの方々の記憶に刻まれればと思います」と言葉を残し、締めくくっていた。
◆取材・文=永田正雄
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