次週『あんぱん』で伝説の落語家が!共に番組を持ったやなせたかしの印象は「エイリアンみたいな人」「大変な勉強家」

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やなせさんのキャリアにとっても重要な番組だった?

 2025年前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』の第21週の予告では、「柳井嵩(演:北村匠海)」が『まんが教室』という番組に出ているシーンが登場しました。こちらは嵩のモデルで、『アンパンマン』の作者であるやなせたかしさんが、レギュラーとして出演していた実在の番組がもとになっていると思われます。

※ここから先の記事では『あんぱん』の今後のネタバレにつながる情報を含みます。

 やなせさんは1964年4月6日から1967年3月27日まで、NHKで放送された番組『まんが学校』(毎週月曜日18時〜18時25分)に、レギュラーで出演していました。やなせさんは同番組内で「マンガの先生」という役割を担っており、スタジオで子供たちに絵の描き方も教えています。

 やなせさんの著書によると、この仕事はある日の午後、四谷の荒木町にあったやなせさん宅にやってきたNHKのディレクター、丸谷賢典さんという人物から突然頼まれたそうです。

 漫画家以外にさまざまな仕事をして、TVやラジオの構成にも関わっていたやなせさんも、このオファーにはさすがに驚いたといいます。「なぜ、ぼくのような無名の漫画家で、明らかに容貌風姿が平均以下の人間のところへ、こんな話が舞いこんでくるのだろう」(やなせさんの自伝『アンパンマンの遺書』より引用)とまで思ったやなせさんですが、好奇心の強い彼は慣れないTV番組の依頼も引き受けました。

 上記の丸谷さんの役割は、NHKで働いている嵩の親友「辛島健太郎(演:高橋文哉)」が担うものと思われます。ちなみにやなせさんは最初、司会者をしてくれと頼まれたとのことで、さすがに断ると、丸谷さんは司会を別に立て「マンガの先生」という役割を作ることを提案したそうです。

 そして、この『まんが学校』で司会進行を務めたのが、放送開始当時まだ28歳だった落語家の立川談志さんでした。

 21週の予告を見ると、番組内で絵を描いている嵩の横に、着物姿で番組を仕切っている男性がいます。NHK出版が出しているドラマのガイドブック「連続テレビ小説 あんぱん Part2」によると、こちらは談志さんをモデルにした「立川談楽」という落語家で、演じているのは談志さんの弟子の立川談慶さんです。

 現在59歳の談慶さんが、そのまま当時の談志さんのような人物を演じるとは限りませんが、やなせさんがともに仕事をした談志さんに対し、どんな印象を持っていたのか振り返ってみましょう。

 前述の自伝『アンパンマンの遺書』では、やなせさんは談志さんについて

「これが生意気星からやってきたエイリアンみたいな人で、自分で『それじゃ今から名人芸を聞かせてやるか』なんて言っているが、一度彼の落語を聞いてその小気味よさに感心した。生意気も芸のうちになっていて毒を中和している」

 と語っています。

 また、ほかの落語家に会った際に、同業者にも毒を吐く談志さんに関して「悪いのと組みましたね。いろいろ大変でしょう」などと言われたこともあったそうですが、やなせさんは

「ぼくは別になんともなかった。のれんに腕押し的性格だし、甘口の方だから、辛口師匠とはうまくいったのだろう」

「不愉快に思うことは何もなく、反対にぼくは彼から多くのことを学んだ。談志は大変な勉強家で努力していた。読書量も豊富だし、到底ぼくなんかの及ぶところではない」

 と、17歳年下の談志さんとの相性や、彼への尊敬の念を述べていました。

 また、別の自伝『人生なんて夢だけど』では、やなせさんは「(談志さんは)生意気が洋服を着て歩いているような人物だから、ぼくの生意気は影が薄くなりました」と書いています。やなせさんは著書でたびたび自分が権威嫌いで、生意気な面があることを語っていますが、談志さんには負けると思ったようです。

 この『まんが学校』出演によって、やなせさんは子供たちを中心に一気に知名度が上がり、それまで大人向けのマンガしか描いていなかったにも関わらず、児童向け雑誌からの仕事が多数入るようになったといいます。そして、「この道はアンパンマン誕生への伏線となる最初の出発点になった」(『アンパンマンの遺書』より引用)とも語っていました。

『あんぱん』の放送は残り1か月半ほどしかないので、『まんが教室』のエピソードにはそこまで時間が割かれないと思われますが、懐かしの番組の再現はかなり話題になるのではないでしょうか。やなせさんが番組内で披露した絵描き歌の場面もあるとのことで、期待が高まります。

参考書籍:『人生なんて夢だけど』(フレーベル館 著:やなせたかし)、『アンパンマンの遺書』(岩波書店 著:やなせたかし)、『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』(文藝春秋 著:梯久美子)、ガイドブック「連続テレビ小説 あんぱん Part2」(NHK出版)

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