温泉に関するさまざまな伝統文化や産業を「温泉文化」と定義し、ユネスコ無形文化遺産への早期登録を目指そうと、和歌山県内の観光関係者らが草の根の署名活動を繰り広げている。インバウンド(訪日客)の誘客をはじめ、地域経済の活性化につなげるのが狙いで、全国的な取り組み。県の観光関係者は「温泉を利用し、交流人口が増えることは地域産業が潤うことにつながる。和歌山にある温泉の良さをどんどん発信していきたい」と意気込んでいる。
無形文化遺産は、日本では「歌舞伎」「能楽」「人形浄瑠璃文楽」のほか、農耕儀礼である「奥能登のあえのこと」「日本の手漉(てすき)和紙技術(和紙)」、近年では「風流踊」「伝統的酒造り」など23件が登録されている。
環境省のデータによると、県内には関西で最多となる500以上の源泉がある。「日本最古の温泉」とされ、世界遺産にも登録された「つぼ湯」がある湯の峰温泉や、川底から湧く源泉に川の水を引き入れる露天風呂が知られる川湯温泉、古事記や日本書紀にも登場する「日本三古湯」の一つ、白浜温泉など名湯が豊富だ。
署名活動は、2023年に一部の知事らで構成する本格的な組織が発足。昨年5月には全都道府県が活動に取り組むこととなった。民間の全国推進協議会で掲げる目標は100万筆で、県内では県旅館ホテル生活衛生同業組合が奔走して既に2万筆を達成。さらに輪を広げるべく、追加の2万筆を集めようと意気込んでいる。
組合の利光伸彦理事長(59)は「和歌山は温泉大国で、県民のみなさんに自慢してもらいたい。署名運動を通じ、和歌山のすごさを知ってもらうことが県民の幸せにつながるのではないか」と署名への協力を呼び掛けている。
推進協では、最短で28年度の登録を目指している。【藤木俊治】
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