高校野球・夏の甲子園準々決勝(19日)
○県岐阜商8―7横浜(神奈川)●(延長十一回、十回からタイブレーク)
横浜はサヨナラ負けの窮地で、勝負手を放った。2度にわたって「内野5人シフト」を繰り出し、3万6000人の観客をどよめかせた。
同点の九回1死二、三塁。左翼手に代わって入った背番号14の阿部駿大が「5人目の内野手」として二塁ベースの右を守り、一塁手はスクイズに備えて極端な前進守備を敷いた。がら空きのレフトに飛べばおしまいだが、投手の踏ん張りを信じ、1点も与えまいとするシフトだ。昨秋の明治神宮大会でも披露し、その後も練習を繰り返していた。
2番打者のスクイズに対し、一塁手が捕手にグラブトスして間一髪、本塁タッチアウト。死球を挟み、続く打者は二ゴロに打ち取った。
十回は3点リードを追いつかれ、なお三塁に走者がいる場面で再び「内野5人シフト」を敷き、代打を一邪飛に。次打者は見逃し三振に仕留めた。
九、十回の「内野5人シフト」の時に、左腕・奥村頼人(らいと)が投じたのは全て真っすぐ。魂のこもった球で押し、バックも応えた。
捕手の駒橋優樹は「頼人は3年間で一番の投球。負けたけど、やってきたことを土壇場で出せた。ただ、相手が素晴らしかった」と目を赤くした。
県岐阜商の藤井潤作監督が「攻撃しているのに、攻められているような感覚だった」と表現した珠玉の守り。春夏連覇はならなかったが、負けてなお強しの印象を残し、横浜の夏は終わった。【石川裕士】
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