(サンマーク出版・2310円)
心の在り方の指針 学者の生涯に求め
この本は米国の魚類の分類学者デイヴィッド・スター・ジョーダンの伝記である。普通伝記といえば描かれる人物の生涯を淡々と客観的に記すもので、著者は表面に出ない。ジョーダンの伝記はすでに他の人によって書かれているし、自伝もある。そこに本書が加わるのは、著者ルル・ミラーが自分の心の在り方の指針をジョーダンに求め続けたからである。本書は科学ジャーナリストである著者半生の心の自伝でもある。
七歳児のころ、夏の休暇中、著者は父親にふと尋ねる。「人生の意味って何?」「父は一瞬、黙って双眼鏡を目にあてたまま、黒い眉毛を片方だけ上げた。それから私のほうを向き、ニヤリと笑い、宣言した。『ないよ』」「まるで、私が生まれてからずっと、父は私がこの質問をするのを待ちわびていたかのようだった。人生の意味は何もない、と父は私に告げた」「意味などはない。神などいない。何らかの形でおまえを見ている存在も、…
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