本村凌二・評 『世界の多様性 家族構造と近代性<普及版>』=エマニュエル・トッド著、荻野文隆・訳

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 (藤原書店・3630円)

家族システムと心性 今世紀の古典

 人類学者トッドは、評者と同じく団塊の世代に属する。かつて二五歳の新進気鋭の学者は、来たるべきソ連の崩壊を予告したのだから、驚くべき予言であった。その背景には、乳児死亡率の上昇という人口動態における異常事態をいち早く察知していたらしい。

 産業革命以前からイングランドの農家では核家族が大半をなしており、それに基づいて個人主義のスタンダードが生まれたと指摘されていた。この単一性モデルは指導教授であるP・ラスレットの認識でもあったが、トッドは家族システムの多様性を主張し、両者は対峙(たいじ)していく。

 トッドの歴史人口学の要点は、なにはともあれ家族システムと心性との因果関係を見出(みいだ)したことにある。本書は『第三惑星』と『世界の幼少期』からなるが、前者は太陽系の第三惑星である地球における家族構造の類型の全体を見通し、後者では世界各地の経済成長の固有性と多様性を分析する。

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