PTAは第二の財布? 承認得ず会費で校舎改修 大阪・岸和田の市立中

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学校の教室(イメージ)=ゲッティ 拡大
学校の教室(イメージ)=ゲッティ

 大阪府岸和田市の市立中で2022年度、校舎2階の多目的室の床をフローリングにする費用にPTA会費約80万円が充てられたことが毎日新聞の取材で判明した。PTA総会で承認を得ず、保護者の指摘を受けるまで市の財産にする寄付採納の手続きも踏まず、事実上、学校の「第二の財布」として使われていた。学校教育法などは公立学校にかかる経費は自治体が負担すべきだと定めており、専門家は「自治体が費用負担すべきで、学校はPTAからの寄付を断るべきだ」と指摘する。

市教委は整備見送り

大阪府岸和田市 拡大
大阪府岸和田市

 市教育委員会によると、床のじゅうたんの汚れがひどくなっており、中学が整備を要望したのに対し、市教委は「安全に支障はなく、優先度は低い」として見送った。それを受け、中学の教職員やPTA役員で協議し、創立周年記念としてPTA会費を充てて床の改修を実施することを決めた。当時の生徒数は約460人で、PTAは保護者から生徒1人あたり1カ月350円の会費を集めていた。

 PTA会費で負担した床の整備は、中学を設置する市への寄付になる。保護者から市教委に指摘があるまで、中学は市が通知で定める必要な市長宛ての届け出をせず、寄付を市の財産とする「寄付採納」の手続きを踏んでいなかった。市教委は学校に対し、口頭で「次から注意してください」と伝え、中学側から「手続きを失念していた」と説明を受けたという。

 本来、PTAから学校に寄付する場合は、臨時総会を開催するなどPTAの会員から広く意見を聞き、承認を得るべきだが、その手続きもされていなかった。

PTA会長と校長、不備認め陳謝

 一連の問題について、PTA会長と校長は23年7月、連名で不備を認める文書をPTAの会員に配った。両者は「本来なされるべき手続きなどを適切に実施することができず、PTA会員の皆様に大変ご迷惑をおかけしました」と陳謝した。

 市教委学校管理課は「市として必要な学校設備の費用を支出している。全ての要望を反映したいが、予算上できることには限りがある。子どもたちのために充実させたいと望み、PTAから物品の提供などの寄付を受けるケースはある」と釈明する。

 学校教育法は、学校の管理運営経費については設置自治体が負担すると定める。地方財政法と施行令は、国や自治体が住民に寄付金を割り当てて強制的に徴収することを禁じ、職員給与や学校の建設事業費、維持・修繕費などを住民に負担転嫁してはならないと定める。文部科学省はそれらの経費以外も安易に保護者に負担転嫁することは適当ではないとする。一方で、PTAなどから学校への自発的な寄付は禁止されていない。

 PTAの学校への寄付を巡って問題になる事例は各地で起きている。名古屋市では18~22年度、市立学校延べ69校がPTAから寄付を受ける際、必要な手続きをせずに77件で総額約3200万円相当の物品などを受け取っていた。同市教委によると、エアコンやプロジェクターなどが含まれていた。学校が90万円を超える物品や空調整備などの提供を受ける場合、書面を提出して市教委が受け入れを決める規定があり、その手続きをしていなかった。

「不十分な予算配分、背景に」

千葉工業大の福嶋尚子准教授=千葉県習志野市で2024年4月24日午後3時、井川加菜美撮影 拡大
千葉工業大の福嶋尚子准教授=千葉県習志野市で2024年4月24日午後3時、井川加菜美撮影

 千葉工業大の福嶋尚子准教授(教育行政学)は「学校設置者である自治体が運営経費を負担するのが大原則だが、自治体の財政力に格差があり、現実的には保護者が支払ってきた歴史がある。寄付金の割り当て徴収や自治体が負担する経費を住民に負担転嫁してはならないと定める地方財政法の趣旨を踏まえ、教育委員会は学校の管理職に対し、PTAからの寄付は断る立場だと研修をしなければいけない。そうした研修が不十分なことと、自治体が十分な予算を学校に配分していないことが問題の背景にある」と指摘する。【中村宰和】

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