年金制度改革で、パートタイムで働く人が社会保険に加入する要件が変わる。いわゆる「106万円の壁」とされる収入要件は、最低賃金上昇の流れから、早ければ来秋撤廃の見通し。従来は「壁」を意識して「収入を抑え、手取りを減らさない」働き控えがあるとされてきたが、環境変化のなか「収入を増やし、手取りも増やす」という意識改革も重要になる。
最低賃金は大幅引き上げへ
年金制度改革関連法が2025年6月成立、公布された。基礎年金の底上げ策が話題になったが、遺族厚生年金の男女差解消、働くシニアの在職老齢年金見直しなど盛りだくさんの内容だ。
特に重要なのが、パートで働く人が「厚生年金・健康保険」に加入しやすくする適用拡大だ。
現在、パート勤務者は、学生を除き(1)月額賃金8万8000円以上(2)所定労働時間週20時間以上(3)企業規模が従業員数51人以上――の要件を満たすと、厚生年金・健康保険に加入する。
制度改革でこのうち(1)(3)を撤廃する。
(3)の企業規模要件は、27年10月から「36人以上」▽29年10月から「21人以上」▽32年10月から「11人以上」――と段階的に引き下げ、35年10月から法人は完全撤廃する。
(1)の収入要件は、最低賃金の動向を見て28年6月までに撤廃する。具体的には、すべての都道府県で最低賃金(時給)が1016円以上となるのを見極める。
これは(2)の労働時間要件が絡む。1016円になると週20時間で月額賃金8万8000円となり、収入要件は意味を失うためだ。
現在、全国平均は1055円だが、地域差があり1016円超は12都府県だけだ。
厚生労働省の審議会は8月…
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