電気料金が高くなる?政府の原発支援策(5)
原発はじめ「脱炭素」大型電源の建設費などを電気料金で支援する「長期脱炭素電源オークション」は、これまで2回の入札が行われたが、最も多く落札したのは原発で、再生可能エネルギーはわずかだった。どうしてなのか。さらに政府は電力会社に都合のよい制度改正を目指している。どういうことか。
電力会社が加盟し、全国の電力需給を調整する国の認可法人「電力広域的運営推進機関」は市場管理者として、毎回オークションの結果を発表している。
第1回オークション(2023年度分、24年1月入札)で落札した脱炭素電源の中で、最も容量が大きかったのは島根原発3号機(131.6万キロワット)だった。続いて蓄電池が109万キロワット、揚水発電が57万キロワット、アンモニア混焼など既設火力の改修が82万キロワットで、再エネはバイオマス発電のわずか19万キロワットだった。
第2回オークション(24年度分、25年1月入札)でも、落札した脱炭素電源で最も容量が大きかったのは原発だ。東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原発6号機(新潟県)、北海道電力の泊原発3号機(北海道)、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)の3原発3基を合わせ、315万キロワットだった。
原発に次ぎ、蓄電池は137万キロワット、揚水発電は36万キロワット、既設火力の改修は9.5万キロワットで、再エネは水力発電の5.2万キロワットだけだった。
本欄の第2回で紹介した通り、「長期脱炭素電源オークションは脱炭素に名を借りた原発優遇制度だ。名前だけ聞くと、再エネを普及させる制度と思う人が多いだろうが、実態は原発のための制度だ」という大島堅一・龍谷大教授(環境経済学)の指摘は、その通りだろう。
「競争による価格低下が働きにくい」
自然エネルギー財団の主席研究員で弁護士の工藤美香氏は、これまで2回のオークションについて「既存設備の支援が原発にも拡張され、第2回では落札の多くを占めるなど、新規電源投資促進という目的からずれた結果になっている。そもそもコストの高い発電技術への支援であるうえ、入札は低調で、競争による価格低下が働きにくい状況にある」と指摘している。
筆者は広域機関に「なぜ再エネの落札が少ないのか。投資が必要な洋上風力発電などの応札がなぜ出てこないのか」と質問したが、「もちろん洋上風力も入札できる。でも…
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