広島電鉄が運行する路面電車の新ルート「駅前大橋ルート」が8月3日に開業し、JR広島駅の新しい駅ビル2階へ乗り入れを始めた。
これにより、もともと駅前広場にあった広島駅停留所は廃止となり、JR西日本の新幹線、在来線の改札口コンコースと同じフロアで乗降できるようになった。乗り換え時間が短縮したのはもちろん、駅ビル内に新停留所があるため、荒天時に傘をさして移動する必要もない。さらにバス乗り場も駅ビル1階の屋根下部分に多くが集約され、路面電車と同様に利便性が向上している。
しかしこれは事がうまく運んだ事例だ。路面電車などが街中を走る都市は他にもあるが、鉄道駅との乗り換えが不便なままのケースもある。今回はこの観点から解説したい。
軽視されていた「乗り換え距離」
乗り換えが生じるのは公共交通機関の宿命でもあり、この点は「ドアtoドア」の自家用車に劣る。ただ、鉄道やバスが自家用車に対してまだ優位だった1960年代までは、駅や停留所の建設場所の都合が優先され、他の交通機関への乗り換えについては「ある程度は歩いて当然」という考え方が優勢だった。旧広島駅停留所も開業は1912年。路面電車が市内交通の主流と見なされていた時代だ。
しかし1960年代以降、都市部で自家用車による交通渋滞が慢性化していったこともあり…
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