鉄道ファン殺到の「過酷ツアー」も 「三セクの優等生」北越急行の今

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「ナイトタートル」に乗り込むツアー参加者=新潟県南魚沼市の六日町駅で2025年7月5日午後11時33分、神崎修一撮影
「ナイトタートル」に乗り込むツアー参加者=新潟県南魚沼市の六日町駅で2025年7月5日午後11時33分、神崎修一撮影

 北越急行(新潟県南魚沼市)には、鉄道ファンが殺到する名物ツアーがある。徹夜でトンネル内を歩き回り「深夜の過酷なツアー」と紹介される「ナイトタートル~夜のトンネル探検」だ。

 終電後の午後11時40分に六日町(南魚沼市)を出発する夜行列車で、普段は絶対に立ち入ることができない線路に下り、トンネル内を見学できる特別なツアーだ。

 7月5日に開催されたツアーには、定員の2倍以上の応募があり、抽選で選ばれた23人が参加した。

 まずは美佐島駅(十日町市)で下車し、赤倉トンネル内に設置された珍しい駅施設や近くの旧変電所を見学。しんざ駅(同市)まで、鉄道設備の説明を受けながら、冷たいトンネル内(2・2キロ)を約1時間かけて歩く。

 その後は、ほくほく大島駅(上越市)まで列車で移動。難工事の末に完成したという鍋立山トンネルの内部に入る。「トンネル探検」を終えて六日町まで戻る列車は、夜明けの車窓を楽しめるようツアータイトルの「タートル(亀)」のようにゆっくりとしたスピードで運行された。

 北越急行の水澤孝太課長代理は「路線の7割がトンネルであることなど、ほくほく線の魅力をPRしたい」と話し、ツアーに参加した仙台市の男性会社員(50)は「トンネルの探検は面白かった。会社の取り組みは応援したい」と話した。

失ったドル箱特急

6月まで北越急行の社長を務めた小池裕明氏=新潟県南魚沼市で2025年6月25日午後4時47分、神崎修一撮影
6月まで北越急行の社長を務めた小池裕明氏=新潟県南魚沼市で2025年6月25日午後4時47分、神崎修一撮影

 「第三セクターの優等生」――。第三セクターの鉄道会社のほとんどが赤字に苦しむ中、1997年の開業から黒字を維持し続けた北越急行はかつて、こう呼ばれていた。上越新幹線の越後湯沢駅から北陸方面へ向かう特急「はくたか」をJRと共同で運行していたからだ。

 しかし、2015年に北陸新幹線が開業してからは状況が一転。北陸へのアクセスは新幹線が主要ルートとなり、収益の約9割を占めた「ドル箱特急」を失った。現在は地域の鉄道として高校生の通学などを支えるが、苦しい経営が続いている。

 6月まで社長を務めた小池裕明氏(65)は「安全運行のため、線路や車両の保守、点検が常に必要で、鉄道はコストダウンが難しい事業だ。今は内部留保(貯金)を食い潰している状態だ」と説明する。

内部留保は約半分に

高架区間を走る北越急行ほくほく線の列車=新潟県上越市で2025年7月12日午前8時30分、神崎修一撮影
高架区間を走る北越急行ほくほく線の列車=新潟県上越市で2025年7月12日午前8時30分、神崎修一撮影

 2024年度決算は最終損益が8億2045万円の赤字で、赤字額は15年以降で最大となった。最盛期に130億円あった内部留保も75億円まで減らした。

 夜のトンネル探検ツアーや、車内の天井に宇宙や花火などの映像を映す「ゆめぞら号」の運行など、知恵を絞った誘客策で路線の活性化を図る。

 ほくほく線を含むローカル線の将来像について、小池氏は県など地域がビジョンを示す必要があると考える。「地域と一緒になって利用客を呼び込むことが必要だ。ただその前段で、バスやタクシーを含め公共交通をどうするのか。県民の移動をどう確保するのか。その方向性を示してほしい」と求めた。【神崎修一】

北越急行ほくほく線

 六日町(南魚沼市)と犀潟(上越市)間の全長59・5キロを結ぶ。国鉄の「北越北線」として1968年に着工されたが、80年に国鉄再建法の施行により工事が中断。84年に県や沿線自治体などが出資する第三セクター「北越急行」が設立され、85年に工事が再開された。97年3月の開業から、越後湯沢と金沢方面を結ぶ特急「はくたか」が運行され、2002年からは在来線として国内最速の時速160キロで運転された。

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