イスラエルの次の標的は「イスラムの核」ではないか。そんな観測がイスラエルで流れている。米国とともに「12日戦争」でイランの核施設を空爆して深刻な被害を与え、パレスチナのイスラム組織ハマスやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラも総崩れとなった。隣国のシリアのアサド政権も瓦解し、中東では「向かうところ敵無し」の状態にある。イスラエルが次に狙いを定めているのは、中東諸国ではなく、あの国かもしれない。
「イスラエルにとっての核の脅威は、イランがナンバー1、パキスタンがナンバー2だ」。イラン空爆後、イスラエルのネタニヤフ首相がこう語るビデオが注目を集めている。首相は、次の標的にパキスタンを見据えているのだろうか。
パキスタンの核は「イスラムの核」?
パキスタンは、アリ・ブット氏が1971年12月に大統領に就任して以後、核兵器開発を目指した。ブット氏が就任する直前には、東パキスタンがインドの後押しを受けて分離独立してバングラデシュを建国するなど、国難を迎えていた時期にあたる。さらに、インドが近い将来に核武装するのは確実な情勢にあり、核兵器開発を急ぐ必要があった。
だが、手元には資金がない。ブット氏は「草を食べてでも核武装を」と精神論を説くが、それでは現実は動かない。ブット氏は、パキスタンの核に「イスラムの核」というキャッチコピーをつければ、中東産油国が資金提供に応じるはずだと思いつく。
イランを手始めに、サウジアラビアやリビアなど産油国を矢継ぎ早に訪問して「キリスト教、ユダヤ教、共産諸国に次いでイスラム教も核を持つ」と支援を呼びかける。その後の石油危機をきっかけに、産油国に潤沢なマネーが流れ込み、産油国は大盤振る舞いに応じた。
イスラエルにとっても懸念材料
「イスラムの核」は、イスラエルにとっても懸念材料だった。核兵器開発を許せば、中東諸国の手に核が渡る可能性が出てくるからだ…
この記事は有料記事です。
残り775文字(全文1571文字)
Comments