
知人が多い集まりだったので、取材半分、みんなの顔見たさ半分で参加した。
8月初旬、東京都板橋区の貸会議室で、一般社団法人マスターピースが初めての活動報告会を開いた。今、勢いのある団体だ。
児童養護施設や里親家庭などを巣立った若者や、何らかの理由で親を頼りづらい若者をサポートしている。おおむね18~29歳で、大人として自立を迫られ、公的支援が乏しくなる世代にあたる。年間延べ1400件ほどの相談が寄せられるという。
スタッフおそろいのTシャツ姿で、代表の菊池真梨香さん(38)がマイクを握った。胸元にある団体のロゴは、家の形がモチーフになっている。
「マスターピースといえば、やっぱり住居です。昨年の初回相談の50%が、住居に関するものでした」
もともと児童養護施設の職員だった。18歳で独り立ちした若者が「学校に行けなくなった」「仕事をやめた」と壁にぶつかる姿を見てきた。
実家という後ろ盾がないため、あっという間に住居を失いかねない現実があった。
困った時に身を寄せられるシェアハウスを作ろうと、2017年に法人を設立した。最初の4年は児童相談所の非常勤と飲食店の夜勤アルバイトをかけ持ちし、身銭を切って取り組んだそうだ。圧倒された。
何とか助成金をかき集め、今は活動に専念している。スタッフの数も増え、首都圏で運営するシェアハウスや1人暮らし練習用の単身住居は計20室になった。敷金礼金なし、家具家電付きで、家賃は3万円から。理解のある大家さんの協力も大きい。
居場所の運営や、生活費が苦しい若者へ食料配送もしている。衣食住ならぬ「居食住」は生活の基盤だ。暮らしを整えることで安心して自分の気持ちと向き合い、自己決定できるようなサポートがしたいという。
「親を頼りづらい若者」の困難は、まだ社会に十分認識されてはいない。虐待、死別や親の病気、貧困など、一言ではくくれない背景がある。
事例報告で最近、大学から「家庭で暴力を受けている学生がいる」との相談が増えていることが紹介された。成人しているので、児童相談所は動けない。
本人が希望すれば、警察や役所と連携し、家を離れる手助けをする。ほとんど所持金がないまま逃れてくる若者を、シェアハウスに受け入れることもある。
報告会の後半は、スタッフ3人による対談だった。
若者の個別サポートを担当する田辺紀華さん(30)と、広報の渡辺睦美さん(29)は、ともに子ども時代を児童養護施設で過ごした。スポットで活動に協力する希咲未來さん(25)は、虐待を受けて夜の街をさまよい、児相に何度も保護された経験を持つ。
偶然にも、虐待経験の「その後」を伝える記事などで、過去に取材をしたことがあった面々だった。
それにしても、雇用する8人のうち半数と、これほど当事者性のあるスタッフが…
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