「お蔵入り」から再起 北九州特産「ぬか炊き」が保存食に 9月販売

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自社のぬか炊きを使って完成した「ぬかだきおこわ」=北九州市門司区で2025年8月6日午後2時、橋本勝利撮影 拡大
自社のぬか炊きを使って完成した「ぬかだきおこわ」=北九州市門司区で2025年8月6日午後2時、橋本勝利撮影

 北九州特産の「ぬか炊き」を製造・販売する「ふじた」(北九州市門司区)は、5年の長期保存ができる「ぬかだきおこわ」を開発した。藤田浩三社長(79)が「大地震など災害時の非常食として役立てたい」という願いを形にした。「防災の日」の9月1日からの発売を予定する。

 同社は「北九州の台所」とされる旦過市場(小倉北区)に販売店があり、40年以上にわたりぬか炊きを取り扱ってきた。大手百貨店でも販売し、小倉を代表する郷土料理として知られるようになった。

 藤田社長は、東日本大震災(2011年3月)や熊本地震(16年4月)などの大規模災害でぬか炊きを使った被災地貢献を模索。商品を被災地に送るなどしてきたが、百貨店のバイヤーなどと連携して独自の保存食開発を計画してきた。しかし、担当者が変わったり新型コロナウイルス禍があったりして「お蔵入り」となっていた。

非常食「ぬかだきおこわ」を開発した藤田浩三社長=北九州市門司区で2025年8月6日午後2時半、橋本勝利撮影 拡大
非常食「ぬかだきおこわ」を開発した藤田浩三社長=北九州市門司区で2025年8月6日午後2時半、橋本勝利撮影

 そんな中、24年元日に能登半島地震が発生。被災地の惨状を知って「いてもたってもいられず」開発に再チャレンジすることに。試行錯誤を経て今年2月に2年間の長期保存の審査を通過。「より長く保存ができるように」と、遮光性の高いアルミニウム容器(アルミパウチ)を用いるなどして改良を継続し、8月中旬には5年保存の審査もパスした。藤田社長は「紆余(うよ)曲折はあったが、ようやく形にすることができた」と喜ぶ。

 使ったのは自社製のサバのぬか炊きと国産の玄米やもち米の玄米。玄米は芯が残るため、独自の温度調整と水分量で食べやすいように調整した。封を開けると、ぬか炊きの香りが広がり、おこわにはサバのコクやうまみが染み渡るように、年齢を問わず食べ続けても飽きないように工夫した。「おこわ特有の腹持ちの良さも特長」という。

 被災地では電気やガスが使えないことを考慮し、常温でもおいしく食べることができるように仕上げた。食後にごみが出ないよう、折り畳んで捨てる容器も袋型を採用した。

 ぬか炊きの知名度向上や食文化継承に向けた取り組みを進める「北九州ぬか炊き文化振興協会」の会長でもある藤田社長だが、「あくまで一個人としての取り組み。非常食として常備してもらえれば」と願う。販売開始を目前に控え、「非常食の関心が全国的に高まってもらうきっかけになれば」と話している。当面はインターネットのみで販売。価格は1パック280グラム入りで税込み800円。【橋本勝利】

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