東京ドームで28日に開幕する第96回都市対抗野球大会では、出場チームなどから募った野球用具をキューバに寄贈する。
屈指の野球大国で国際大会でも好成績を残していたキューバだが、近年の経済状況悪化が国民的スポーツにも影を落とす。
用具は、国が新設する野球学校で活用される予定だ。キューバのヒセラ・ガルシア大使(64)は「困難な状況でいただく寄贈品は、大きな貢献をしてくれるはずだ」と期待を込める。
資金不足「国技」に影落とし
キューバに野球が伝来したのは、日本に伝わった1872年より古いとされている。政府も普及に力を入れ「国技」として愛されてきた。
1990年代から2000年代にかけて代表チームがオリンピックで金メダル3個と銀メダル2個を獲得。初開催となった06年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝での日本との死闘も鮮烈な印象を残した。社会人野球のシダックスやプロ野球にも名選手を多く輩出し、現在では巨人で活躍するライデル・マルティネス投手(28)らがいる。
しかし10年代に入ると国際大会の表彰台に姿を現さなくなった。
米国からの経済制裁で国内の経済状況が悪化したためだ。野球用具も資金も足りなくなった。資金不足のため、国際大会に備えた海外遠征や大会直前の合宿もかなわなくなった。
余裕を持った入国ができず時差調整や直前練習なく大会に臨み、結果が残せなくなった。米国での国際大会では入国ビザが下りないことも多いという。
ガルシア大使は「野球はキューバの国技で、文化の一端を担っているものだ。国民は今の困難な状況に非常に心を痛めている」と話す。
苦境打開へ、野球専門学校新設
苦境を打開しようと、キューバは今年9月、首都ハバナに野球専門の学校を新設する。全国から若い才能を集め専門教育を施す。
ガルシア大使によると、各地に野球を含めたスポーツの学校は多く存在するが、野球に特化した全国的な養成機関は初めて。
都市対抗で集めた用具は主にこの学校に寄贈される。ガルシア大使は「寄贈は外国からの協力第1号になる。日本の皆さんからの贈り物だ。(学校設立で)キューバの野球が昔のレベルにまた戻ることができれば」と願う。
9月8日の決勝当日、グラウンド上でガルシア大使に贈られる。都市対抗では23年から使われなくなった野球用具の寄付を続けている。23年はミクロネシア連邦、24年はパラオに贈られた。【田中綾乃】
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