万博の「イスラエル軍事占領」訴える説明 協会が“対応”要望→撤去

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万博開幕前、パレスチナパビリオンに置かれていた「発送はイスラエルの軍事占領のため遅れています」の説明書き=大阪市此花区で2025年4月9日、望月亮一撮影 拡大
万博開幕前、パレスチナパビリオンに置かれていた「発送はイスラエルの軍事占領のため遅れています」の説明書き=大阪市此花区で2025年4月9日、望月亮一撮影

 2025年4月、大阪・関西万博の開幕直前。パレスチナパビリオン(PV)は展示物が届かず、がらんとしていた。代わりに置かれていたのは、「発送はイスラエルの軍事占領のため遅れています」という説明書き。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる万博で、理想と現実に矛盾があることが浮き彫りになった。

 ところが説明書きは数日で撤去された。この件で、日本国際博覧会協会(万博協会)がパレスチナ側に対し、説明書きを変更するなど対応を求めていたことが毎日新聞が入手した内部メールで明らかになった。

国際法違反と判断後も続く占領政策

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争を経て、ガザ地区とヨルダン川西岸地区、東エルサレムを軍事占領した。パレスチナ自治政府がある西岸地区では違法な「入植」が続く。

 24年には国際司法裁判所がイスラエルの占領政策を「事実上の併合」で、国際法違反と判断。国連でも日本を含む賛成多数で占領終結を求める決議案を採択している。

 パレスチナは港や空港を自由に使えず、万博の展示品もイスラエル経由で送る必要があった。駐日パレスチナ常駐総代表部によると、開幕1年前から西岸地区で荷造りの準備をしていたが、船便の許可が出なかったという。

 そこで空輸に切り替え、発送を待つことになった。こうした状況について、ワリード・シアム大使は「軍事占領がパレスチナにとって障壁になっている」と述べていた。

万博協会「速やかなご検討」求める

 パレスチナPVは他国との共同入居型PVにある。説明書きは開幕リハーサルがあった4月6日ごろに置かれ、9日午後には撤去された。

 毎日新聞が入手した内部メールによると、万博協会国際局の担当者が4月8日夜、パレスチナ側に「万博を安全かつ円滑に進めるという観点から」、説明書きへの対応を求めた。具体例として、「差し替え(Replace)や内容の変更(Change)」を挙げた。「友好的な解決に向けて、速やかなご検討をいただければ幸いです」とも記していた。

 万博協会の広報担当は取材に対し、「各参加者及び関係省庁とは普段から連絡を密にしているが、詳細を明らかにすることは差し控える」としている。パレスチナPVに荷物が届き、貝細工や木工品、刺しゅうなどの展示が始まったのは、開幕から10日以上過ぎた4月24日だった。

 一方、イスラエルPVでは、東エルサレムにある旧市街で出土した約2000年前の塔の一部という石材が展示されている。1954年に採択され、日本も批准する「武力紛争の際の文化財保護条約」の議定書は、占領地からの文化財輸出を禁じている。

 パレスチナ側はイスラエルの展示を「国際条約に違反する」などと抗議している。万博協会は毎日新聞の取材に対し、「展示物の搬入にかかる手続きは各国の裁量に任されており、協会は確認する立場にない」と回答。出土品持ち込みには「関与しない」とする立場を示した。

 日本の敗戦から80年が経過したが、世界では戦争や虐殺が絶えない。実は70年の大阪万博でも、理想と「矛盾」する展示が撤去される事態が起きていた。【矢追健介】

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