川崎市中原区の神奈川県立新城高校で2024年度、女子生徒が吹奏楽部内でいじめを受けたと訴えたのに、学校がマニュアルに定められた関係職員によるケース会議を開かず、事実上放置していたことが学校への開示請求などで判明した。学校は加害者側、被害者側とされる生徒間で直接の話し合いを長時間させ、被害を訴えた生徒はうつ病を発症した。
女子生徒は3カ月以上の欠席を余儀なくされ、県教育委員会設置の第三者組織がいじめ防止対策推進法の「重大事態」として調査している。
女子生徒は24年4月に高校へ進学し、吹奏楽部に入部。間もなく同じ楽器を担当する上級生ら5人から無視をされたり、仲間はずれにされたりした。さらに手首の腱鞘(けんしょう)炎治療などで練習を休むと、執拗(しつよう)に理由などを追及されたという。
女子生徒は同年8月上旬に学校へ「いじめ」を訴えたが、当時の校長らは「すれ違い」「人間関係のトラブル」として、生徒同士で話し合う場を同月中旬に設定。女子生徒は上級生ら5人から約2時間半にわたって「手首(の腱鞘炎)は嘘だと思っている」「大会に出られると思っていることが厚かましい」「みんなあなたのことを信用していない」などの言葉をかけられた。
女子生徒は自殺願望や不眠の症状が表れ、うつ病と診断。学校の欠席が続き、吹奏楽部を退部した。学校側は10月下旬に「いじめ認知報告書」を県教育委員会に提出。諮問を受けた弁護士や社会福祉士らでつくる第三者組織が、重大事態としていじめの有無や学校側の対応について調査をしている。
学校が自ら策定した「いじめ防止等対策マニュアル」では、いじめが疑われる相談や通報があった場合、管理職や養護教諭、スクールカウンセラーを集めたケース会議を緊急開催し、情報収集や対応に当たるとしていた。
だが女子生徒側が今年6月、ケース会議の開催状況を学校に開示請求したところ、女子生徒に関する記録を「作成も保有もしていない」と通知され、事実上放置されていたことが判明。4月に赴任した新校長は「きちんとした組織を立ち上げて会議を開催せず、聞き取りの情報で(当時の)校長がいじめはないと判断していた」と謝罪したという。
女子生徒は現在も完治せず、週2、3回しか登校できていない。「文化祭など学校行事でやりたいことはたくさんあったが、断念せざるを得なかった。同じようなことが起こらないよう検証してほしい」と訴えた。学校側は取材に「いじめの有無も含めて個人情報のため答えられない」としている。【蓬田正志】
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