主要配信でランキング1位に輝く話題作
TVerのサービス開始当初、お気に入り登録者数と視聴率が乖離するケースが多発した。メインキャストのファンがドラマの内容や面白さを度外視して「推しを応援したい」一心で登録していたからなのだが――「ここにきて視聴率とお気に入り登録者数の差異がなくなってきた」とキー局プロデューサーは言う。
象徴的なのが「この夏クール、最大の話題作」とテレビマンやウォッチャーが口を揃えるマリッジ・サスペンスドラマ「しあわせな結婚」(テレビ朝日系)だ。第1話のネット再生回数は一週間で308万回を突破し、テレ朝のゴールデン・プライム帯(夜7時〜11時)の最高記録を樹立。TVer総合ランキング、Netflix、TELASAなどの主要配信プラットフォームでもランキング1位に輝いた。
「松たか子(48)演じる美術教師・ネルラは、クロワッサンの食べ方や歩き方など、どれをとってもクセ強で表情から心がまったく読めない難解なキャラクター。そんなネルラに一目惚れして結婚したのが阿部サダヲ(55)扮する弁護士・幸太郎。芸達者な二人のやりとりや一挙手一投足がとにかくおもしろくて、しあわせな結婚生活を描くコメディなのかと思っていたらネルラに殺人の疑いが……。遺影の無い仏壇、ネルラに執着する刑事の正体など、前半で持ち上がった謎や伏線が今後どう回収されていくのか、楽しみで仕方ない」(放送作家・愛田プリン氏)
脚本を手がける大石静氏は「徹子の部屋」(テレ朝系)に出演した際、当初、タイトルは「ネルラという妻」だったがスタッフに説得されて変更したと明かした。
「なぜ平仮名の『しあわせ』にしたのか? 局内でも考察が盛り上がっています。岡部たかし(53)、玉置玲央(40)、板垣李光人(23)、杉野遥亮(29)らドラマ好きや女性視聴者に刺さるキャストたちの演技も魅力のひとつ」(テレ朝関係者)
若い視聴者を取り込むべく他局がコア視聴率(13〜49歳男女の視聴率)獲得に注力するなか、昔ながらの世帯視聴率にこだわっていたテレ朝だが、今クールから「路線変更に踏み切った」とキー局プロデューサーは見ている。
「『相棒』『科捜研の女』など、昔の時代劇のような決まりきったキャスティングの作品群がテレ朝の強みであり特徴でしたが、『しあわせな結婚』のようなチャレンジングな作品、配信プラットフォームを通して世界に売り出せるような作品を作りたいという意気込みを感じます」
「HERO」(フジテレビ系)やNHK朝ドラ「まんぷく」に携わった福田靖氏を脚本に、大森南朋(53)、相葉雅紀(42)、松下奈緒(40)の豪華俳優陣を主演に据えた「大追跡〜警視庁SSBC強行犯係〜」もそんな意欲作のひとつだが、ライターの大山くまお氏は″悪癖″を指摘する。
「テレ朝水曜夜9時枠では10年ぶりの新作ということで、水谷豊(73)の『相棒』の後釜を狙っているのでしょうが、シニア層を意識しているのかストーリーがストレートすぎ。舞台であるSSBC(捜査支援分析センター)を活かせず、他の刑事ドラマとの差別化ができていない」
韓国ドラマのリメイク「誘拐の日」(テレ朝系)は「半沢直樹」「下町ロケット」(いずれもTBS系)を担当した丑尾(うしお)健太郎氏に脚本を託し、海外展開を視野に入れた作品だが、「韓国版を見てしまうと人情味、サスペンス、スケールのどれもが見劣りします。そもそもダメ人間である主人公を演じるには斎藤工(たくみ)(43)はカッコ良すぎます」(大山氏)。
数字的には苦戦しているが、作中で世界クラスの煌(きら)めきを見せる″超逸材″にテレビマンたちは可能性を見出している。
「韓国版に出てくる天才少女は設定年齢が11歳なのですが、日本版では8歳の永尾柚乃(ゆの)が演じています。中国語、タガログ語、フランス語、アラビア語、英語、韓国語を操る才媛で、ヘタな若手より安心して見ていられる演技力を持っている。子役なのに子役に見えず、ベテランの風格。一見の価値ありです」(愛田氏)

『FRIDAY』2025年9月5日号より
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