「嵩の2倍好き!」で”キュン死”続出…『あんぱん』で中園ミホがみせた『やまとなでしこ』との共通点

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NHK朝ドラ『あんぱん』でヒロイン・のぶを演じる今田美桜

20年かけて気持ちを通わせた二人

NHK連続テレビ小説『あんぱん』の第85話が7月25日に放送され、ヒロイン・のぶ(今田美桜、28)と幼馴染みの嵩(北村匠海、27)の告白シーンに“キュン死”コメントが殺到している。

本作は『アンパンマン』の生みの親・やなせたかし氏と暢夫婦がモデルで、二人が幾多の荒波を乗り越えて、逆転しない正義の象徴『アンパンマン』を生み出すまでを描く、愛と勇気の物語だ。

第85話では昭和南海地震で安否がわからなくなっていた嵩の無事が明らかになったものの、地震の最中も寝ていたことを知ったのぶは、電話口でブチ切れ、

「死ぬほど心配して損した」

と受話器を激しく叩きつけた。そんなのぶにみずからの思いを伝えるため、嵩は高知から東京へ向かう――。

「東京高等芸術学校の生徒だった頃、嵩は銀座のショーウインドウに飾られていた赤いハンドバッグを見て一目ぼれ。勇気を出してのぶにプレゼントするも拒否されたといういわく付きの品を8年ぶりにプレゼントします。『僕は朝田のぶの頃からあなたが好きでした。これからもずっと、あなたを愛しています』。

告白できたことで満足した嵩がそのまま帰ろうとするのを見て、のぶは『たっすいがー(弱々しいの)は、いかん』と呼び止め、こう続けます。『一人になってやっとわかった。嵩はなくてはならん人や』。言い終わるや駆け寄って抱きつき『好きや。嵩の2倍、嵩のことが好き!』と、のぶも思いを告白。20年かけて気持ちを通わせた二人に、ネット民からは“神回”の声が上がりました」(制作会社プロデューサー)

朝ドラ史に残る“神回”となった第85話。しかしこのシーンを観ながら、MISIAの大ヒット曲『Everything』が頭の中で流れ出したのは、私だけだろうか。

『Everything』は、今作を手掛ける脚本家・中園ミホの代表作『やまとなでしこ』(フジテレビ系)のテーマソング。貧しい家に育ち、最高のおカネ持ちとの結婚を目指して“合コンの女王”となるCAの桜子(松嶋菜々子)と、将来を嘱望される数学者だったが家庭の事情で留学を切り上げ、魚屋を継いだ欧介(堤真一)とのロマンチック・コメディだ。

’00年12月18日に放送された最終話の視聴率は34.2%を記録。’00年以降に放送されたフジテレビの恋愛ドラマとしては、歴代1位という金字塔を打ち立てた名作である。

気弱でおとなしい欧介が数学の道で成功を収めることができたのは強気の桜子の叱咤激励があったからこそ。嵩とのぶの関係は、欧介と桜子の関係にとてもよく似ているのだ。

欧介と桜子が結ばれる、『やまとなでしこ』のラストシーンを振り返ろう。

赤いハンドバッグとブリキのカメレオン

最終回直前で自分の本当の気持ちに気がついた桜子は欧介に告白するも、

「自分は桜子さんに相応しくない」

と振られてしまう桜子。そして迎えた最終回。数学の論文が認められた欧介はアメリカの大学で数学を勉強するためにニューヨークへと旅立つ。そんな欧介への思いを諦めきれずに、桜子もまたニューヨークへ。

大学の前のベンチに座っていた欧介の前に突如、桜子が現れる。驚く欧介に桜子はかつて彼にプレゼントされたブリキのカメレオンを返す。

このカメレオン、おカネよりも大切なものがあることを桜子に教えてくれた大切なお守りだ。そのまま立ち去ろうとする桜子の思いを知った欧介は、カメレオンを再び桜子に返し――名セリフが生まれる。

「あなたが持っていてください。僕はもう逃げません。あなたが好きです。たとえ、あなたの気が変わったとしても……」

そして、桜子もこう返すのだ。

「私には見えるんです。10年後も20年後も、あなたのそばに私がいる。残念ながら、あなたといると、私は幸せなんです」

『やまとなでしこ』の最後を飾るにふさわしい名場面となった。

思い返せば、欧介がプレゼントしたブリキのカメレオンも、嵩の赤いハンドバッグも、もどかしいほどすれ違う二人の心模様を象徴する魅力的なアイテムではなかったか。

すれ違いこそラブストーリーの醍醐味であり、遠距離こそ思いを募らせる媚薬である。それを熟知する“恋愛ドラマの達人”中園ミホが、第85話でそのエッセンスを見事に反芻(はんすう)してみせた。

「好きや。嵩の2倍、嵩のことが好き!」

のぶの告白は『やまとなでしこ』の桜子のセリフに比べたら物足りなく感じるかもしれない。やなせ氏の自伝には愓が「やなせさんの赤ちゃんが産みたい」と言ったと書かれているが、朝ドラにその表現は相応しくない。だが、のぶのストレートな想いがこもった「好きや。嵩の2倍、嵩のことが好き!」も彼女らしいセリフだ。

朝ドラ『あんぱん』で、中園ミホは今後どんな名場面を作っていくのか。楽しみに待ちたい――。

文:島 右近(放送作家・映像プロデューサー)

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