米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は2日、インドがロシア産の原油輸入を今後も継続する方針だと報じた。トランプ米政権は、ウクライナ侵攻を続けるロシアの収入源を細らせるため、ロシアと取引する第三国に100%の「2次関税」を課すと圧力をかけていたが、インドは露産原油を安価に輸入する利点の方が大きいと判断した可能性がある。
NYTによると、インド政府高官は、原油調達に関する政策に変更はないと説明。国営の石油精製企業がロシア以外からの原油調達を進めているとの別の報道もあったが、高官は「政府は石油企業に対して、ロシアからの輸入を削減するよう指示は出していない」と語った。
一方、インド外務省の報道官は1日、露産原油の輸入に関連して「インドは国際市場の原油の価格とその時点の国際的な状況に応じて判断を行っている。具体的な点については詳細を把握していない」と述べた。
インドは中国と並ぶ露産原油の主要な輸入国だ。トランプ政権はウクライナとの停戦に応じないロシアへの圧力を強めるため、中印などに「関税を引き上げる」と脅し、原油購入を止めさせようとしている。
露産原油を巡って、ロイター通信は7月30日に「インド国営の石油精製企業が過去1週間、露産原油の輸入を停止した」と報道。米ブルームバーグ通信も31日に「インド政府が国営石油精製企業に対し、露産原油の供給が停止した場合の代替の調達先や量に関する計画を作成するよう指示した」と報じていた。
トランプ米大統領も8月1日に「インドがロシアからの原油購入をやめると聞いた。本当かどうか分からないが、良い一歩だ」と記者団に語っていた。NYTの報道はこうした見方を打ち消した形だが、インドが水面下で代替の選択肢を探っている可能性はある。
インドは露産原油を巡る問題とは別に、米国との貿易交渉も続けている。トランプ政権は8月7日からインドに25%の高関税を課す方針だが、インドも国益を重視する姿勢を貫いており、合意は見通せない状況だ。【ニューデリー松本紫帆】
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