/433 上田岳弘 倉田悟・絵

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「そのことだけを何とか認識すると、原初の博士は、自我を維持することができなくなり、世界に溶けてしまいました。ですが、寂しがる必要はありません。世界に溶けるということは、ある意味で原初の博士と世界とが一つになることを意味しています。原初の博士はその姿も自我も維持できていませんから、その意味ではもういません。ですが、観測限界を超えた小さな小さな世界に原初の博士の成分が溶け込んでいて、それは世界を形作る基になっている。その意味で原初の博士はあらゆる場所に遍在しているという言い方もできるでしょう」

 原初の博士の祈りでできた、世界を守る壁。それから、原初の博士の遺志を継ぐ研究者たち。世界の創世神話のよくあるパターンでは、世界の始まりと、王権の正統性の説明の他に、世界の終わりについても説くものが、そう言えばあった。世界の終わりを、正しく迎えるために、あるいはそれに抗(あらが)うために、指導者の提示するものに従うように。それが、戒律を生み、社会の安定性を生み出す。集団としての人間が生きていくため…

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