主人公なのに鬼畜外道…『ゼオライマー』「どっちが悪役?」と視聴者戦慄の“胸クソすぎる”所業とは

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もはや主人公がラスボス?

「主人公なのに敵より悪い奴」と聞いて、どんなキャラクターを思い浮かべるでしょうか。

 1988年から1990年にかけてリリースされたOVA『冥王計画ゼオライマー』の主人公は、まさにその極致といえる存在です。

 ちみもりを先生による同名マンガを原作とするこの作品は、ロボットアニメの常識を根底から覆す衝撃的なキャラクター造形で、多くの視聴者に強烈な印象を残しました。

●敵組織から奪取された最強メカ「ゼオライマー」

 世界70%のシェアを持つ多国籍企業「国際電脳」を隠れみのとする秘密結社「鉄甲龍(ハウドラゴン)」。鉄甲龍は八卦の思想に基づいた8体の巨大ロボット「八卦ロボ」で世界征服を目論みますが、そのうち最強の1体「天のゼオライマー」が15年前に奪われ、日本政府の秘密基地・ラスト・ガーディアンに保管されていました。

 天のゼオライマーは全高50m、重量480tの巨大ロボットで、次元連結システムにより無尽蔵のエネルギーを操ります。特に「スーパーロボット大戦」シリーズでも有名な「メイオウ攻撃」は原子レベルで敵を分解する恐るべき威力を誇り、「メイ・オウ」という鈍い駆動音と共に放たれる必殺技として作品の象徴的存在となっています。

 このゼオライマーを操縦するのが、本作の主人公「秋津マサト」です。ごく普通の15歳の少年として育った彼でしたが、ある日突然ラスト・ガーディアンに拉致され、自分がゼオライマーのパイロットとして造られた試験管ベビーであることを知らされます。しかも彼の正体は、ゼオライマーの開発者である天才科学者「木原マサキ」のクローンだったのです。

●優しい少年が凶悪な科学者に豹変する恐怖

 ここからが本作最大の特徴です。普段のマサトは気弱で優しい性格なのですが、ゼオライマーに搭乗すると木原マサキの記憶と人格が覚醒し、残忍で傲慢な人格に完全に豹変してしまいます。その変貌ぶりは人相すら変わるほど激しく、まさに別人となるのです。

 この木原マサキこそが、作品史上稀に見る「鬼畜外道な主人公」でした。彼の邪悪さは戦闘での行動に如実に表れています。市街戦で一般市民が巻き添えになることを「むしろ奴らが市民の事を考え、動きが鈍れば好都合!」と言い放ち、意図的に民間人を盾として利用します。

 さらに恐ろしいのは敵への攻撃です。一撃で倒せる相手をわざわざジワジワとなぶり殺しにし、「茶番は終わりだ」と冷酷にトドメを刺します。「月のローズセラヴィー」戦では「チャージなどさせるものか」と相手の必殺技発動を無慈悲に阻止。勝負の公平性など眼中にありません。

●造物主として八卦衆を弄ぶ残酷さ

 マサキの外道ぶりは、敵である八卦衆への扱いにも表れています。実は八卦ロボのパイロットたちは全員、マサキが遺伝子操作で創り出したクローンでした。彼は彼らに強烈なトラウマを植え付け、苦しむ様を楽しみます。塞臥を愛するロクフェル、そのロクフェルを愛する祗鎗という三角関係に対し「同じ受精卵に手を加えた、言わば貴様らは兄弟どころか、同一人物!」と残酷な真実を告白。彼らの愛情を「プログラムに過ぎない」と一蹴し、精神的に追い詰めるのです。

 極めつけはヒロインの氷室美久への扱いです。実は美久はマサキが創り出したアンドロイドであり、ゼオライマーの中核システムである次元連結システムそのものでした。彼女なしではゼオライマーは3分の1以下の出力しか発揮できず、戦闘時には美しい少女の姿から一転、機械の骸骨のような恐ろしい姿に変形してゼオライマーと一体化します。この変形シーンは当時の視聴者に強烈なトラウマを与えました。

 そんな美久を、マサキは「成長するガラクタ」と呼んだり、さらには物理的な暴力まで振るいます。「俺がそんな善人に見えるか?」という台詞通り、彼には一片の良心も存在しません。

●敵サイドが善人に見える逆転現象

 この作品の白眉は、主人公があまりに邪悪すぎるため、敵である鉄甲龍側が相対的に善人に見えてしまうことです。八卦衆は互いを想い、最後まで人間らしい感情を保ち続けます。一方のマサキには「悲劇的な過去」も「確固たる哲学」も描かれません。監督の平野俊弘氏が「あえて描かなかった」と明言するほど、徹頭徹尾「邪悪の権化」として造形されているのです。

●時代が生んだ異色の傑作

 重厚感たっぷりに描かれる巨大ロボットの迫力ある戦闘シーン、外道すぎる主人格の別人格「木原マサキ」の存在、そして声優・関俊彦さんによる二重人格の怪演。これらの要素が見事に融合した本作は、現在でも多くのファンに語り継がれる衝撃作となりました。特に「スーパーロボット大戦」シリーズへの参戦により、原作を知らない世代にもその衝撃的なキャラクター性が伝わりました。史上稀に見る「鬼畜外道な主人公」の存在感は色褪せることがありません。

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