
太平洋戦争末期に硫黄島(東京都小笠原村)で戦死した佐々木巍(たかし)さん(享年31)の孫、新井涼子さん(53)=京都府宇治市=は今回の毎日新聞の取材を受け、それまでに調べていた巍さん、その父集寛(ちかひろ)さんらの生涯を改めて見つめ直した。親族以外には伝えてこなかった物語が記事で知られるようになり、この連載中の3日に亡くなった母寛子さんや、祖母愛さんの知人らから新たな情報も寄せられている。
<全6回連載の最終回です。>
第1回 「申し訳ない」 “いないもの”と避けた亡き父へ 転機は慰霊訪問
第2回 軍人恩給もカンパに…硫黄島で夫を亡くした母 平和活動に注いだ日々
第3回 母が残した人形と後悔の涙 調査のきっかけになった大叔母の文章
第4回 米国で強制収容された曽祖父の足跡 砂漠地帯を訪問、人生に思いはせ
第5回 若くして戦死、調べあぐねた祖父の人生 硫黄島訪問が転機に
愛さんの遺品の中に、巍さんの尋常小学校卒業式の集合写真があることも分かった。東京都豊島区にあったその母校は空襲で焼けたが、後身の小学校が分かれば写真を送りたいと考えている。
「80年前に硫黄島で戦死した人が、100年ほど前に同じ地域で暮らしていたんだよって、今の子どもたちに伝えてもらい、平和学習に役立てれば」と涼子さんは話す。
兄の新井京さん(54)は同志社大法学部教授(国際法)だ。国際人道法が専門で、20年余り前から占領に関する研究に注力。パレスチナ問題、米英によるイラク占領(2003~04年)などの研究を経て、10年ほど前から沖縄に注目するようになった。
敗戦後の日本が1952年に独立を回復したサンフランシスコ平和条約発効の前後、主に50年代の米国による沖縄統治について、国際法の観点から考察した初めての書籍「沖縄の引き延ばされた占領―『あめりか世(ゆー)』の法的基盤」(有斐閣)を2023年3月に刊行した。国際法研究の優れた業績を顕彰する第57回安達峰一郎記念賞を受賞。同年10月には沖縄国際大に招かれて講演した。
米国と沖縄の関係は、従来の通説では1952年の条約発効前が「軍事占領」、発効後から…
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