ロボットと街づくりに注いだ情熱 元安川電機社長・利島康司さん

Date: Category:経済 Views:3 Comment:0
2016年の北九州商工会議所の新年賀詞交歓会でロボット柄のネクタイを披露する利島康司さん=北九州市八幡東区で2016年1月6日、石田宗久撮影 拡大
2016年の北九州商工会議所の新年賀詞交歓会でロボット柄のネクタイを披露する利島康司さん=北九州市八幡東区で2016年1月6日、石田宗久撮影

 安川電機を産業用ロボットで世界に飛躍させた利島康司さんは、若手の開発者を大切にした熱いリーダーだった。

 主力の電動産業用ロボット「モートマン」は1977年に誕生し、自動車業界でヒットした。しかし、バブル景気崩壊後の不況で苦戦。94年、赤字が続くロボット事業部への異動を命じられた利島さんは、当時の経営陣の期待を知る由もなく「左遷されたと思った」という。それでも腐らず、元気のいい若手に「俺と一緒にやろう」と呼び掛けた。

 どんなに優れた製品も営業力がなければ売れない。利島さんは「世界一のロボットメーカーになろう」と目標を掲げると、まだ世の中にない技術開発に向け「顧客のニーズを犬のようにかぎ回れ」と御用聞きを命じた。リクエストを受けると「3日で作れ」と技術陣を鼓舞した。

 事業部はその後、黒字に転換。いまや世界各地に展開する産業用ロボットは、売上高2374億円(2025年2月期)と全体の約4割を占め、安川電機の収益の柱へと成長させた。「失敗はいい製品を開発すれば挽回できる」と語る姿が印象に残っている。

 10年から病気療養のため退任する21年7月まで務めた北九州商工会議所の会頭時代は、生まれ育った北九州の街のにぎわいづくりが最大の関心事だった。ものづくりの街である北九州市の特徴を生かし、工場見学や海から工場夜景を眺める産業観光を推進した。

 商議所の新年賀詞交歓会では遊び心たっぷりに、ロボット柄のネクタイを披露することもあった。あいさつでは「街へ出て新しい友達を作ろう。必ずいいことが起きる」と2次会に行くよう促し、笑わせた。地域経済を活性化させたいという願いからだろう。ロボットと街への思いを胸に駆け抜けた人生だった。【石田宗久】

Comments

I want to comment

◎Welcome to participate in the discussion, please express your views and exchange your opinions here.