次週『あんぱん』では嵩が「作詞」を担当 実はやなせたかしは「戦後すぐ」から名曲を書いていた?

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兵士たちから大人気だった歌とは

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』95話の最後では第20週「見上げてごらん夜の星を」の予告が流れ、「柳井嵩(演:北村匠海)」が作曲家「いせたくや(演:大森元貴)」から、「ぼくがその詩にメロディーを乗せるので歌詞を書いてみてくれませんか」の作詞の依頼をされる場面も描かれました。

 崇のモデルである『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんは1961年に名曲「手のひらを太陽に」の歌詞を書いています。曲を付けたのは、いせのモデル、いずみたくさんでした。

 そのほかにも『アンパンマン』の主題歌やその他関連曲、童謡など数々の曲の歌詞を考えたやなせさんは、実は20代のうちに意外な形で作詞を経験しています。それは『あんぱん』では描かれていない、1945年8月の終戦から、1946年1月にやなせさんが日本に戻るまでの、中国での出来事でした。

 陸軍の小倉連隊に所属していたやなせさんは、終戦までの時期を上海郊外の泗渓鎮(しけいちん)という場所で過ごします。戦争が終わった後、やなせさんたちは隊に3年分の籠城を見越した食料があったため、食べるのに困ることもなく、牧歌的で文化的な日々を過ごしたといいます。

 終戦後は、かつていばっていた将校たちが意気消沈して存在感が薄くなり、代わりに小倉連隊にいたもともと映画監督、カメラマン、小説家、編集者、役者、画家などの職業だった者たちが、リーダシップを発揮するようになりました。

 美大出身でデザイナーをしていたやなせさんも、中心人物として、壁新聞を作ったり、娯楽として披露した演劇「嗚呼(ああ)、故郷」の脚本と演出を担当したりしたそうです。ちなみに、隊には北九州のヤクザも多数おり、賭場も開かれていました。

 そして、やなせさんは隊のみんなのためにさまざまな歌を作ります。作曲は慶応大学出身で経理をしていた平川曹長という人物が、ハーモニカで担当したそうです。前述の演劇の主題歌も作りました。

 軍歌ではなく、故郷を思いながらみんなで歌えるような曲ができたことがうれしかったのか、いざ日本に帰るときになると、やなせさんはさまざまな兵士たちから港で「歌詞を書いてくれ」と頼まれたといいます。やなせさんはできる限り、ひとりひとりに手書きで歌詞を渡してあげました。

 やなせさんいわく、当時どんな歌を書いたのかは覚えていないとのことで、唯一、中国の醸造酒をテーマにした「老酒(ラオチュー)ラプソディー」という曲があったことだけは、かすかに記憶にあったそうです。

 いまとなっては歌詞の詳細は分かりませんが、多くの仲間を喜ばせる歌を作っていたのはたしかで、やなせさんは「今ぼくは、マンガを描き、詩を書き、歌も歌う、というのが仕事になっていますが、実は兵隊の頃、すでにほとんど同じようなことをしていたわけです。もともとそういうことが好きだったんですね」(2013年にやなせさんが書いた書籍『ぼくは戦争は大きらい 〜やなせたかしの平和への思い〜』より引用)と語っていました。

 兵隊時代からマルチな才能を発揮していたやなせさんの戦後の活躍は、『あんぱん』でどこまで再現されるのでしょうか。まずは20週目で描かれる予定の作詞や、ミュージカル『見上げてごらん夜の星を』での嵩の仕事ぶりに注目です。

参考書籍:参考書籍:『ぼくは戦争は大きらい 〜やなせたかしの平和への思い〜』(小学館 著:やなせたかし)、『アンパンマンの遺書』(岩波書店 著:やなせたかし)

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