
警視庁公安部による冤罪(えんざい)「大川原化工機事件」では、捜査に疑問を持ち、起訴を止めようとした捜査員らがいた。
監察部門への内部通報をはじめ、警視庁内外の四つのルートを使い、捜査の過程で違法行為があったなどと訴えた。
しかし、誰も現場の声に耳を貸すことはなく、進言は黙殺された。
警視庁が7日に発表した検証報告書では、この進言の存在に触れておらず、冤罪の再発防止の実効性に疑問を残す形となっている。
※同時公開のスクープ記事あります
大川原冤罪、起訴5日前の内部通報明らかに でも監察部門機能せず
捜査員の3分の1は捜査に否定的
大川原事件の捜査を担当した公安部外事1課5係のメンバーは約20人。他の係からの応援や、人事異動による入れ替えを含めると、捜査に関わったのは約50人に上る。
捜査関係者によると、捜査員には当初から「冤罪」と感じていた人もおり、メンバーのうち3分の1は捜査に否定的だったという。
公安部が大川原の本社などを家宅捜索したのが2018年10月。20年3月11日には、社長ら3人を外為法違反(不正輸出)の疑いで逮捕した。
このまま何もしなければ、社長らの勾留期限を迎える31日には起訴されてしまう。
一部の捜査員はそれまでも上司に慎重な捜査を訴えていたものの、表だって捜査に異を唱えることはなかなかできなかった。
転機は、大川原元取締役の島田順司さん(72)を逮捕した際の取り調べを巡る問題が明るみに出たことだ。
「捜査主任官」として捜査員を束ねた5係の宮園勇人係長(警部、当時)の方針に忠実に従っていたとされる安積伸介警部補(当時)が、容疑の認否などを記す調書「弁解録取書」(弁録)を廃棄した問題だ。
故意に廃棄したとすれば公用文書毀棄(きき)罪に問われる行為で、捜査に否定的だった捜査員たちは起訴阻止に向けて一斉に動いた。
検事「不安になってきた」
口火を切ったのが、…
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