王谷晶さん「成功に理由を見いだすのは難しい」 英ダガー賞を受けて

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ダガー賞を受賞した王谷晶さん©Isac
ダガー賞を受賞した王谷晶さん©Isac

 作家、王谷晶さんの『ババヤガの夜』(サム・ベットさん訳)が、優れたミステリー・犯罪小説に贈られる英国推理作家協会賞(ダガー賞)の翻訳部門に選ばれた。ミステリーは「頭のいい人が書くもの」と、縁遠く感じていたという王谷さん。受賞を受けて感じたことや、ミステリーマニアだったという祖父との思い出をつづってもらった。

祖父の予言あるいは呪い

 だいぶ前に亡くなった母方の祖父はたいそうな趣味人で、特にミステリー小説とクラシック音楽が大好きな人だった。

 祖父母宅の2階は壁という壁が本棚で埋まっており、そこに国内外の文庫本とハヤカワ・ミステリがぎっちりと詰まっていた。その祖父から小学生のときに『シャーロック・ホームズ大全』(鮎川信夫著、講談社刊)をプレゼントしてもらったのをきっかけに、私も古典ミステリーを読むようになり、ノートに拙い探偵小説を書いたりもしていた。

 長じて20代からアルバイトと並行して執筆業を始め、本格ミステリー作家を目指した……わけではなく、その頃には読書傾向も趣味も小学生の時分からは変化していたので、ゲームシナリオやライトノベルの人気作家になれたらと夢見ていた。

 孫が僅かながら書き物の仕事をするようになったことを祖父は喜んでくれたが、なんせ高齢でゲームやラノベの世界には造詣が深くなく、小説を書いていると言ったら「そうか、じゃあいつか『文学界』や『文芸』に載るんだな」とにこにこしていた。

 私が書いてるのは純文学じゃないんだってば、と思ったが、結局ラノベ方面では芽が出ず、…

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