
日本の歴史学者らを中心に「東アジア共通歴史博物館」を設立する構想が動き始めた。ただ、各国の歴史認識には隔たりがあり、日本国内でも歴史認識は多様だ。戦後80年を迎え、新たな視座で歴史博物館を設立する意義と課題を探った。
議論で視点の違い痛感
7月30日、東アジア共通歴史博物館の設立を目指す研究チームがオンライン会合を開いた。意欲的な構想の前途に待ち受けるであろう課題を語ったのが、日本福祉大教育・心理学部の齋藤一晴准教授だった。
齋藤さんは過去20年以上、日本、中国、韓国の歴史研究者とともに共通歴史教材の作成に携わってきた経験がある。2005年と12年にそれぞれ教材を出版し、9月には集大成となる「新・未来をひらく歴史」(高文研)を刊行する。しかし、作成過程の議論では、各国の視点の違いを痛感することも多かった。
齋藤さんが7月の会合で一例に挙げたのが、「民間人に対する無差別空襲」だった。米軍による原爆投下や東京大空襲と、旧日本軍による中国・重慶への爆撃などが事例に挙げられたが、中国の研究者は「ひとくくりに扱うのはどうか」と難色を示した。日本と米国は対等な戦争当事国同士だが、日本と中国は「加害国」と「被害国」という関係だとの認識が背景にあった。
日本の植民地だった朝鮮半島出身の「日本兵」に対する認識では、…
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