ビラやユーチューブ広告から、神棚に扇風機、温泉旅館宿泊料、入湯税、そして喉あめまで――。
7月20日に投開票された参院選京都選挙区(改選数2)に立候補した9人が、選挙運動費用の収支報告書を府選管に提出した。支出の平均額は1026万8021円。最高額と最少額には55倍もの差があった。選挙への多種多様な「カネ」の使い方を調べてみた。
支出額最多は
支出額が最も多かったのは、4選を果たした自民党の西田昌司氏で2569万3510円。ビラや看板の作製など「立候補準備のための支出」が約2027万円、「選挙運動のための支出」が約541万円だった。
選挙期間中は個人演説会を重ねたこともあり、会場使用料など演説会にかかった費用は約193万円。さらに終盤戦に実施した電話作戦のオートコール(自動音声)代として東京都内の会社へ220万円を支払った。また、33年ぶりに上限額が引き上げられた車上運動員の報酬は、上限額の1日2万円を10人に支払っていた。
トップで初当選した日本維新の会の新実彰平氏の支出額は1174万4901円だった。車上運動員への報酬は1日1万7000円。ポスター貼りの報酬として、会社員や主婦、団体職員など12人に4050円~1万2150円を支払った。「人件費」が全体の1割となっている。
西田氏、新実氏のほか、立憲民主党の山本和嘉子氏は1680万6742円、共産党の倉林明子氏は1380万1890円で、候補者9人のうち4人の支出額が1000万円を超えていた。
一方、支出額が最も少ないのは、政治団体「NHK党」の木村嘉孝氏で46万4004円。ビラやポスター作製といった立候補準備への支出だった。全てNHK党が費用を負担。木村氏の負担は0円となっている。次いで少ないのは、無所属の二之湯真士氏で167万7918円。
れいわ新選組の西郷南海子氏の支出額は662万3473円。6割強が「広告費」で、ユーチューブ広告として計275万円を選挙情報プラットフォームを運営する会社に支払った。参政党の谷口青人氏の支出額は711万3698円、国民民主党の酒井常雄氏は848万6058円。
さまざまな支出内容
各候補の支出内容はさまざまだ。
SNSが選挙でも効果を発揮する中、ある候補は「選挙特設ページ開設費用」として7万7000円を京都市の会社に支出。別の候補は「ホームページデザイン料」に約350万円をかけていた。
京都選挙区は広く、候補者が宿泊施設に泊まることも。ある候補は、海の幸が味わえ日本海を望む露天風呂も備えることで人気の温泉旅館の宿泊料として7万7510円(宿泊人数不明)を支出。別の日にはリゾートホテルに宿泊し、宿泊料に加えて600円の入湯税を支払った。
猛暑の中の選挙戦で、暑さ対策への支出も目立つ。ある候補は演説会場用の氷柱代として製氷会社に1万5000円を支払い、氷のう代購入にも3058円を支出。別の候補は扇風機や冷凍冷蔵庫を家電量販店やホームセンターで購入した。
当選を祈願してか、初当選を目指したある候補は選挙事務所の「神棚代」として3万6300円を支出。別の候補は過酷な選挙戦で声がかれたためか、候補者や運動員のための喉あめを薬局で購入していた。
財源は
選挙運動費用の収入をみると、党公認候補は財源の大部分が、いわゆる「公認料」を含む党や党支部からの寄付だった。さらに新実氏は350万円、山本氏は250万円の自己資金も用意した。西田氏は1900万円の寄付のうち1700万円が、自身の政治団体(資金管理団体)からとなっている。
選挙公営制度で、選挙公報や政見放送などの費用は公費で賄われるほか、有効投票数の一定割合の票を得た候補はビラや看板、ポスターの作製費の一部などが公費負担される。【久保聡】
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