《覚せい剤はやめ続けるしかない》田代まさし氏「ガリガリの薬物中毒写真」で怖さが伝わり歯止めを…今の若者に感じる“孤独”から“孤立”への生きづらさ

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 田代まさし氏(68)が2022年10月27日に出所してから、2年10か月が経った。覚醒剤取締役法違反などでの逮捕を乗り越えて、2024年末には復帰後初めての地上波テレビへの復帰を果たしたばかり。かつて所属していた『ラッツ&スター(旧シャネルズ)』が今年45周年を迎えるなか、自身もライブを行うなど、音楽活動も積極的だ。

 振り返れば、生きづらさを感じて薬物に手を染めたが、刑務所に入っても、シャバに戻っても、生きづらさは変わらなかった。それでも今、生きている。そんな田代氏が「生きづらさ」を抱える人にメッセージを送る──。【全3回の第2回。第1回を読む】

衝撃の激痩せショット、真相は

──薬物って、すごく取引価格が高いと聞きますが……買うんですか。

 俺の場合、タダでもらえちゃったんだよ。お金払うんだったら俺も辞めようがあったんだろうけど、くれちゃうから。

──2回目以降、自分は依存症だという自覚はあるんですか。

 最初はなかった。でも2回目に刑務所行った時に(薬物依存症のリハビリ施設である)ダルクにつながって、それで5年以上やめられた。依存症って、完全回復がないんだ。けど、努力でやめ続けることはできる。「やめ続ける」ことだよ。「やめる」ことはできないんじゃないか。

──5度目の逮捕の時(2019年)には、ゲッソリした激痩せショットが話題を呼びました。

 薬を使っているとまったく食えなくなるし、夜眠れなくなるんだよ。体はボロボロなんだけど、しっかりしてなきゃいけないと思うわけ。そうすると、余計にたくさん吸ってしまう。しかもどんどん量が増える。そうしたら、ますます飯を食わない、寝ない。それでガリガリになってゆく。(薬が)切れて鬱になる前に打つ。負の連鎖が起こっていくんだ。

 あの写真、実はもう使うのをやめてほしいと思ったことがあるんだよ。だって、今はもう太って健康的になっているんだからさ。だけど、あれが出続けることで、薬物を使うとこんなになっちゃうんだという怖さが伝わり、何かの歯止めになればいいなと思うようになってきた。

──ご自身であの写真をご覧になった時、何か思いましたか。

 正直な話、頭はハゲ散らかしていたけど、服を脱ぐと筋肉質で、研ぎ澄まされたボクサーのような素晴らしい体になってると思っていたんだよ、少なくとも、自分のなかではね。ハタから見たらおかしいかもしれないけど、本人はネガティブに思ってない。薬の影響だって、今ならわかる。

薬物依存症のリハビリで「変わった」こと

──田代さんは、自分を完璧主義的だと思いますか。

 そうだね。たとえば舞台で、音響さんの間が悪くてコントの音がうまくハマらないと、「そこだと笑いが来ないんだよ」ってものすごく怒っていた。ステージでは絶対に失敗を許さない姿勢でやってきていたんだと思う。でも、その音響さんがまた同じステージで同じ失敗した時に、俺が「だから、そこじゃねえのになあ」と言ったら、それがウケたんだよ。今ならウケたのなら結果オーライだって思うよ。

 それは、薬物依存症のリハビリをするなかで、「人間だから、失敗はする。ただし失敗しても、次に失敗しないためにはどうしたらいいのかを考えればいい」と思えるようにはなったからだね。

──何度も逮捕されて刑務所生活を繰り返したことで、人に対する考え方も変わりましたか。

 傷つきたくなくて、薬物に何度も手を出した。逮捕や刑務所生活で俺から離れた人もいたし、それでも味方してくれる人もいた。今でも手を差し伸べてくれる人がいることを、俺は本当に感謝しなきゃいけない。

 お袋に言われた言葉で、「辛いときほど笑顔でいなさい」というものがある。あと「どんな人にも優しくありなさい」「してあげたことはすぐ忘れなさい、してもらったことは忘れてはダメ」。それを俺はずっと守って生きていて、それは昔も今も変わらないよ。

最初の「1回」を踏みとどまるために

──今、若い世代で「生きづらさ」からオーバードーズ(OD)してしまう人が増えています。そういった人たちに思うことはありますか。

 傷つきたくないのはわかるよ。でも薬に手を出そうと考える人に一つだけ言えるのは、どんなものでも最初の1回がやばいということ。その1回が取り返しつかないことになるということを、俺は経験をもって言える。

──最初の1回を、なんとか踏みとどまるためには?

 ふとした言葉が救ってくれる部分はあると思う。いい映画を見た時、いい本を読んだ時、いい詩を読んだ時、いい歌を聞いた時、いい景色を見た時。何気ないところで触れた言葉や人に救われることがある。その感性を大切にするべきだし、同じ価値観の人と過ごしたらいいと思う。

──同じ価値観の人を見つけるのが難しい。

 ある本で読んだんだけど、人間はみんな半円なんだって。残りの自分の半円を探してさまよっている。でも、なかなか同じ半円はないんだよ。ただ、人間は不思議なもので、ピッタリ同じ半円でなくても、少しなら調整しようとする。

 とはいえ、それに無理が生じると割れてしまう。同じ音楽、同じ風景、同じ映画、そういったものに触れた時、「これいいよね」って言える人とは価値観が合うということだね。

 今、ドラッグやODをする人たちの周りには、たぶん使ってる人がいるんだよ。「もっといいのあるよ」「え、やったことないの?」とかっていう世界だから。やめ方を教えてくれる人は、使ってる人の中にはいない。だって俺は、ダルクで初めてやめ方を教わったからね。“逃げ”から何かに手を出すんじゃなくて、自分の心に取り入れたいものを探すんだ。

──新宿の一角に集まる、「トー横キッズ」と言われる人たちもいます。

 いつの時代も不良はいた。俺たちの頃もシンナーやってる子たちや、体を売る子はいたんだよね。何か世の中に不満があったり、生きづらさを感じていたりしているから、反発して不良になってきた。

 40年前と今とで、生きづらさの違いがあるとしたら、不良でも俺たちは団結してた。友情があって、仲間がいた。それが今の人たちは心を通わせない。本当の友達ではない人たちと集まってつるんでるだけで、本当の絆の中にいないというか……その点は、違うと思う。俺たちは「孤独」だったけど、今は「孤立」のような気がする。

 孤独って自分の心が感じることであって、でも大丈夫だよって言ってくれる仲間がいたら少し救われる。孤立するとそういう人たちがいないでしょ。それを正してくれる人に出会ってくれたらいいなと思うね。

(第3回に続く。第1回を読む)

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