第107回全国高校野球選手権大会(日本高野連、朝日新聞社主催)は19日、岐阜代表の県岐阜商が準々決勝で2度目の春夏連覇を目指す横浜(神奈川)と対戦し、延長十一回の熱戦の末、8―7でサヨナラ勝ちを決めた。2009年以来、16年ぶりのベスト4入りに、スタンドは歓喜の渦に包まれた。
準決勝は21日、第1試合(午前8時開始予定)で日大三(西東京)と対戦する。【道下寛子、矢倉健次】
手に汗握る白熱した展開となったが、県岐阜商が今春のセンバツ覇者を相手に16安打の猛攻を見せ、逆転サヨナラ勝利を収めた。
前半は県岐阜商が試合を優位に進めた。一回裏1死一塁の場面で内山元太(2年)の適時二塁打で先制。四回には渡辺璃海(2年)の適時打で追加点を挙げるなど五回までに4点を挙げ、守備でも先発の渡辺大雅(2年)が五回まで無失点に抑える好投を見せた。
チームメートからも「前向き」と定評のある渡辺大。スタンドで試合を見守った野球部の青山瑞歩さん(3年)は「最速120キロ台でも変化球を丁寧に投げれば横浜でも打てないと思っていた。すごい!」とたたえた。
しかし、後半は持ち前の打線が沈黙し、一転して横浜ペースに。主戦の柴田蒼亮(2年)がマウンドに上がるも、八回までに4点を許し、同点に持ち込まれた。
無死一、二塁で始まる延長タイブレークに突入すると、県岐阜商の打線に再び火が付いた。3点を追う延長十回裏、宮川鉄平(3年)がセンターへ安打を放ち無死満塁の好機を作ると、小鎗稜也(3年)の適時二塁打で同点に追いついた。
甲子園では3試合で1安打のみと打撃に苦しんだ小鎗だが、「もどかしく、苦しかった。(同点打は)芯に当てることができた」。 試合を決めたのは坂口路歩(3年)。延長十一回裏2死一、三塁の場面で左翼へサヨナラ打を放ち、勝利へ導いた。坂口は「最高にうれしく、鳥肌が立った。みんなでつないで取った得点です」と喜び、「タイブレークに入ってからはずっと苦しかったが誰一人、諦めていなかった」と振り返った。
最後は県岐阜商の打撃と粘り強さが光った。
県岐阜商・藤井潤作監督
16安打は速い球に振り負けないよう練習してきた成果。2回目の守備タイムは主将の河崎が勝手に取って、伝令としてマウンドへ走った。私がパニックだったのかもしれない。いい判断だった。
県岐阜商・河崎広貴主将
サヨナラ打の坂口は中学が同じで仲もいいので、決めてくれてうれしかった。3点リードされた時も「絶対勝てる、気を抜くな」とベンチで言い続け、みんなが信じてくれたので逆転できた。
チア、軽快な踊りで盛り上げ
県岐阜商のチアリーダー7人は、軽快な踊りでスタンドを盛り上げた。普段は吹奏楽部員でカラーガードを担当。6月以降、合間を縫って自主練習を重ねてきた。1年から毎夏踊っている3年の松岡風月さん(18)は「カラーガードはきれいに踊るが、チアははっきり踊らないといけない」と難しさを口にし、「試合を重ねるごとにそろってきた。甲子園で踊れるなんて、選手のおかげで貴重な経験をさせてもらった」と笑顔を見せた。
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