米露首脳会談は惨事に 「安全の保証」不可欠 元駐ウクライナ米大使

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米ホワイトハウスで写真撮影に応じるトランプ大統領(中央)とウクライナのゼレンスキー大統領(左隣)ら欧州首脳=2025年8月18日、ロイター 拡大
米ホワイトハウスで写真撮影に応じるトランプ大統領(中央)とウクライナのゼレンスキー大統領(左隣)ら欧州首脳=2025年8月18日、ロイター

 ロシアのウクライナ侵攻を巡り、トランプ米大統領は15日にプーチン露大統領と、18日にウクライナのゼレンスキー大統領や欧州首脳らと会談した。当面は、露ウクライナ首脳会談の調整と、米欧が提供するウクライナへの「安全の保証」の協議が焦点だ。今後の見通しについて、米国の元駐ウクライナ大使のスティーブン・パイファー氏に聞いた。【聞き手・ワシントン西田進一郎】

 米アラスカ州であった米露首脳会談は惨事だった。トランプ氏は停戦を確約させる目的で臨んだが、プーチン氏は拒否した。トランプ氏は拒否すれば科すと脅していた「厳しい制裁」の発動を見送った。

米アラスカ州で共同記者会見に臨んだトランプ米大統領(右)とロシアのプーチン大統領=2025年8月15日、ロイター 拡大
米アラスカ州で共同記者会見に臨んだトランプ米大統領(右)とロシアのプーチン大統領=2025年8月15日、ロイター

 それどころかプーチン氏はトランプ氏を説得し、明らかにロシア寄りでウクライナ側には受け入れられない「合意」の策定に協力するよう求めた。ウクライナが東部ドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)から軍を撤退させ、ロシアに割譲することを和平交渉の開始条件とする内容だと報じられている。

 これは交渉が失敗した場合、ロシア軍がはるかに有利な状態で戦闘を再開できるという「わな」だ。ロシアに対する米国の一部制裁を解除することなども含まれていたという。

 懸念を抱いた欧州の首脳らはホワイトハウスに駆けつけた。トランプ氏と会談するゼレンスキー氏を支援するためだろう。18日の米ウクライナ首脳会談や欧州首脳らを交えた会合は、一部だが米露首脳会談で生じたダメージを修復した。

 まず、アラスカでの「合意」が事実上破棄された。ウクライナへの「安全の保証」にトランプ氏が関与すると明言した。トランプ氏は、プーチン氏にゼレンスキー氏との会談を促したという。さらに、トランプ氏は欧州諸国から停戦が重要な「第一歩」であるという報告を受けた。米露首脳会談の後、ウクライナのコートにあったボールをロシア側に戻した形だ。

 ホワイトハウスは、トランプ氏が世界の注目を浴びたことを喜んでいるようだ。しかし、真の問題は、トランプ氏がどのようなフォローアップをするかだ。

 焦点は「安全の保証」の内容だ。ウクライナが大規模で装備の整った軍隊を維持するために必要な資源と武器を提供する西側諸国の約束▽英国とフランスが主導する有志連合による地上部隊の配置▽北大西洋条約機構(NATO)と米国の空軍力による後方支援▽将来のウクライナのNATO加盟の可能性を残すこと――などをパッケージで提供することが重要だ。

 強力な「安全の保証」がない限り、ウクライナ国民が、ロシアによる占領地域をどの程度譲歩するかという困難で苦痛な決断を検討することはないだろう。

 一方、プーチン氏は依然としてウクライナを持久戦で破り、戦場で目標を達成できると考えているだろう。ウクライナが東部ドネツク州をロシアに譲渡するような代償を支払う場合には「交渉」に応じる用意はあるが、交渉を長引かせたり、失敗を宣言したりする可能性もある。プーチン氏が戦場で目標を達成できないと気づき、そのコストがさらに増えるまで方針を変更しないだろう。

スティーブン・パイファー氏=本人提供
スティーブン・パイファー氏=本人提供

Steven Pifer

 米スタンフォード大国際安全保障協力センターに所属し、ブルッキングス研究所非常勤上級研究員も務める。1978年に米国務省入りし、25年以上にわたり旧ソ連諸国や欧州、軍備管理を担当。駐ウクライナ大使などを歴任した。

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